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Arqit Quantum Inc.ARQQ
事業内容
Arqit Quantum Inc.は、将来の量子コンピュータによる攻撃にも耐えうる通信の暗号化技術をソフトウェアで提供するサイバーセキュリティ企業です。同社はクラウド経由のSKA-Platformというサービスで、追加の専用機器なしに通信やデバイスの間で使える暗号鍵を自動的に作り、運用できる仕組みを提供しています。
同社の主な顧客は通信事業者や政府機関、金融機関、自動車関連企業など、ネットワークや機密データの保護が重要な組織です。収益は従来の企業向け一括ライセンスに加え、近年はチャネルパートナーを通じた運用型ライセンス(定期的な利用料)に移行しており、年間継続収益の拡大を目指しています。
事業構成としてはコアのSKA-Platformを軸に、クラウド提供のソフトウェアとパートナー経由の配布・サポートを組み合わせています。製品はエッジ機器やクラウド環境など幅広く適用可能で、販売モデルとしては高額な前払いライセンスと利用量に応じた定額・従量課金の両方を扱いながら、研究開発と外部データセンターや通信基盤の調達に依存して事業を展開しています。
経営方針
同社は成長戦略の中核を「継続的な利用料収入(年間継続収入:ARR)の拡大」に置いており、製品の商用化を通じて収益化を加速することを目指しています。具体的には、2022年12月以降にエンタープライズ型からチャネル経由の配信モデルへ移行し、チャネルパートナーを通じたオペレーションライセンスで利用が増えるほど毎年の繰り返し収入が伸びるビジネス構造を構築しています。なお同社は追加の資本調達が必要であると明示しており、市場機会は大きく(同社が参照する情報では情報セキュリティ市場は2028年に約2,940億ドルと推定される)、これを取り込むことで長期的な黒字化を目指しています。
同社は研究開発とチャネル拡大に重点投資を行っています。差別化の柱は「対称鍵合意技術」によるSKA‑Platformで、ソフトウェアのみで鍵を生成・配布するため追加ハードウェア不要で導入が容易という点を強調しています。技術面では量子コンピュータによる攻撃にも耐える設計をうたっており、2022年にサリー大学から設計面の保証を受けるなど第三者検証も進めています。また販売面ではデータセンター容量や光ファイバー経路を外部からリースしてクラウドで提供する仕組みに依存することで、顧客側の大規模な設備投資を不要にする戦略を取っています。
同社は新市場開拓として政府・防衛、通信(5G含む)、金融、モノのインターネット(IoT)やコネクテッドカーといった分野を主要ターゲットに設定しています。これらの業界は大量のエッジ機器や機密通信を抱えるため、ソフトウェアベースで広く適用できる同社の製品と親和性が高く、同社は主要な技術パートナーやディストリビュータとの協業拡大を通じて顧客基盤を横展開していく計画です。加えて国際展開ではチャネル経由での導入を優先しながら、各国の認証や規制対応、ベンダー評価を進めることで市場参入の障壁を下げることを目指しています。
同社は技術革新に継続投資する方針で、特許出願や営業秘密の保護、製品ロードマップの実行に資源を割いています。ソフトウェアの形態により迅速なアップデートと脆弱性対応が可能である点を強みとしつつ、知的財産の承認遅延や模倣リスクに備えて保護・訴訟対策も実行します。さらに情報セキュリティ管理やサプライヤー評価などの体制整備(国際標準に基づく運用や社内のサイバー対策)を強化し、製品の信頼性と導入後の運用支援を両輪で高める取り組みを継続しています。