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Archrock, Inc.AROC
事業内容
Archrock, Inc.は、米国内の天然ガスや原油の生産・輸送現場向けに圧縮設備と運転サービスを提供する会社です。同社は自社で圧縮ユニットを保有して現地で稼働させる契約運転を主軸に、設備の設置から稼働管理まで一貫して請け負っています。また、点検や大規模なオーバーホールを含む保守サービスも行っています。
同社の主要顧客は中下流分野のミッドストリーム企業や天然ガス・原油の生産会社で、全米の主要産地で約280社にサービスを提供しています。収益の大部分は契約運転による月額固定の手数料から安定的に得ており、アフターマーケット向けの部品販売や保守が補完的に収益を生んでいます(近年はアフターマーケットが総収入の一部を占めています)。
事業は大きく契約運転とアフターマーケットの二つの柱で構成されています。契約運転部門は大馬力の圧縮機を多数保有して稼働率向上を目指し、アフターマーケット部門は部品供給と定期保守・改修で既存顧客の稼働を支えます。さらに同社は遠隔監視やデジタル化を進めて設備の稼働時間を伸ばし、サービス効率や環境対策の改善にも注力しています。
経営方針
同社は長期的な米国内天然ガス需要の追い風を取り込んで成長を図っています。具体的には、契約運用(コントラクトオペレーション)とアフターマーケットサービスの二本柱を活かし、遊休ユニットの再稼働や重点地域への馬力追加で収益基盤を拡大する方針です。直近では2024年8月にTOPSを買収し、約58万馬力(うち約53万馬力が稼働中)のフリートを取得するために現金8.687億ドルと自社株約690万株(時価約1.391億ドル)を支払い、買収総額は約10.08億ドルとなりました。資金面では7月の公募増資で約2.557億ドルの純収入を得ており、配当や自社株買い(取締役会が許可した5,000万ドル枠内で2024年末時点で約2,220万ドルを実行)を継続しつつ成長投資に充てています。
同社は大馬力機器に重点投資することで競合と差別化を図っています。2024年末時点で稼働馬力の約74%が1,000馬力超の大型ユニットであり、同社は「大馬力フリートを持つ最大手」の一角を占めています。アフターマーケット売上は2024年に全体の約15%を占め、約280社の顧客基盤を持つ点も強みです。さらに、過去数年で小型ユニットの売却(2024年は約17.5万馬力、2023年は約19.9万馬力の売却で、売却分の約75〜80%が小型ユニット)を行い、ポートフォリオを大型化して稼働効率とマージンの改善を狙っています。
同社は新市場開拓と事業拡大を「有機的成長と買収の両輪」で進めています。具体策としては、遊休機を主要成長地域に再配置して稼働率を高める一方、買収により地域密度と供給能力を短期間で強化する戦略をとっています。TOPS買収はこの方針を象徴しており、買収資金は増資、2032年満期の社債発行、そして貸付枠の借入で調達しました。加えて、同社は国内の主要産地(例:パーミアンやイーグルフォード等)でのプレゼンスを重視し、液化天然ガス向けやメキシコ向けの輸送需要、発電・産業用途の増加を取り込み成長機会を追求しています。
同社は技術革新を収益性向上の鍵と位置づけ、設備稼働率向上とコスト低減を目標に投資を続けています。2019~2021年に基幹業務システムやサプライチェーン管理を刷新し、2023年以降は遠隔計測や車載データの解析、作業の自動化、フィールド向けデジタルツールの本格運用に注力しています。これにより故障予知や稼働停止の最小化を図り、現場技術者が監督できるユニット数を増やすことで走行距離や燃料消費を削減し、排出量削減と利益率向上の両立を目指しています。サイバーセキュリティ面でも2024年に独立評価と全社的な強化措置を実施し、取締役会の監督下で運用体制を整備しています。