Apollo Commercial Real Estate Finance, Inc.ARI

時価総額
$13.8億
PER
商業用不動産向けの商業ファーストモーゲージローン等の投資・運用を行うREITの大手。商業抵当ローン、劣後融資、債務証券化の貸付・証券化プラットフォーム。2009年9月運用開始、2020年に私募証券化、2022年にブルックリン物件のJV化。米国中心の事業展開。

事業内容

Apollo Commercial Real Estate Finance, Inc.は商業用不動産向けの貸付と関連債務投資を主軸とする上場REIT(不動産投資信託)です。同社は主に第一順位抵当ローンや劣後ローンといった商業不動産担保の融資を組成・取得し、それらを保有・管理して利息収入を中心に収益を上げています。運用は外部の運用会社が担い、アポロの投資プラットフォームを活用して取引の発掘や管理を行っています。

主要な顧客はオフィス、物流、商業施設、宿泊施設などを所有・運営する不動産オーナーやデベロッパーで、同社はこうした借り手に対して大型融資を行います。収益構造は貸出金利と借入コストの差(利ざや)が中心で、貸付利息や手数料、場合によっては資産売却や証券化による利得も収入源になります。税制上REITであるため、同社は課税所得の大部分を株主へ配当する方針をとり、投資家は配当を通じて収益を受け取ります。

事業面では単一の報告セグメントで運営し、主要な商品ラインは第一順位抵当ローン、劣後(サブオーディネート)融資、その他の不動産関連債務投資に加え、状況に応じて不動産の直接保有や共同投資も行います。資金調達は社債や銀行借入、プライベートな証券化などを組み合わせて実行し、金利変動への対応策を講じながらポートフォリオの利回りとリスクを管理しています。運用判断や取引実行は運用会社の専門チームが担い、同社はそのネットワークとノウハウを活用して投資機会を獲得しています。

経営方針

同社は資本効率の向上と株主還元の両立を目指しています。米国の不動産投資信託(REIT)として税務上の要件を満たしつつ、課税所得の少なくとも90%を配当に回すことが求められており、安定した分配を維持することを成長戦略の重要な柱としています。2024年は株主帰属の当期純損失が約1億3,190万ドルとなった一方で、2023年は4,590万ドルの純利益を計上しており、同社は損益変動を見据えつつ貸出ポートフォリオの拡大と収益性回復を目指しています。手元流動性は2024年末時点で現金同等物約3.17億ドルがあり、資金調達手段としては社債や私募による担保付き借入、証券化を併用してスケールを図る方針です。

同社は主に稼働中の商業用優先抵当ローン、劣後融資およびその他の商業不動産関連債務を重点投資分野としています。差別化要因は、外部運用者であるアポロ系マネジャーのグローバルなディール・フローと専門人材へのアクセスで、アポロの運用資産残高は2024年12月31日時点で約7,510億ドルという規模を背景に優良案件の獲得を図っています。与信審査や取引構造の組成に注力し、必要に応じてマッチファンド型の資金調達や金利ヘッジ、私募証券化(過去のBarclaysとの証券化取引など)を活用して金利リスクや資金コストの最適化を目指しています。

新規市場開拓や事業拡大については、アポロのグローバルプラットフォームを活用した共同投資やジョイントベンチャーを通じて地理的な幅を広げる計画です。例えばダウンタウン・ブルックリンでの共同事業は、実務上のスキームの一例であり、今後も第三者やアポロ関連の共同投資家と連携して案件を組成していく方針です。資本政策面では、追加の株式発行や外部調達を通じた増資で成長資金を確保する可能性があり、発行済株式数は2025年2月7日時点で約1億3,887万株、2024年6月28日時点で非関連株主保有の市場価値は約13億ドルという規模感を持っています。なお、増資はマネジャー報酬の基礎にも影響するため、利害調整が必要です。

技術革新やガバナンス面では、財務報告やリスク管理の堅牢化に取り組んでいます。経営陣は2024年12月31日時点で内部統制の有効性を評価し、COSOフレームワークに基づく評価で有効と判断、独立監査法人Deloitteの証明を受けています。また、会計上はCECL(推定信用損失)を重要な見積り項目として運用し、インラインXBRLなどのデジタル開示やESG要素の投資判断への統合、さらにSECの気候関連開示ルールの影響評価も進めており、データやプロセスの整備を通じて投資判断と開示の質を高めることを目指しています。