ARGENX SEARGX

時価総額
PER
免疫疾患向けバイオ医薬品の有力企業。FcRn阻害薬やVYVGARTなどの治療薬を展開。2023年7月に12億ドルの公募増資、2023年6月にHYTRULO承認、2030年に第3相5剤・5万人治療目標。米国・欧州・日本中心に展開。

事業内容

ARGENX SEは、自己免疫疾患で困る患者向けに治療薬を研究・開発し、世界市場で承認薬を販売するバイオテクノロジー企業です。同社の主力製品はVYVGARTで、点滴型や皮下注型の製剤が一部の希少な免疫疾患で承認・販売されています。

同社の主要な顧客は専門の医療機関とそれを通じて治療を受ける患者で、収益は主にVYVGARTとその皮下注製剤の販売によって支えられています。加えて、共同開発やライセンス契約に伴うマイルストーン収入やロイヤルティーも重要な収入源になっています。

事業は商業化と研究開発の二本柱で展開しており、商業面では販売網の拡大と保険者との交渉を進めています。研究開発では免疫を調節する新しい作用を持つ候補薬群(例:empasibrubartやARGX‑119など)を育て、外部パートナーや受託製造業者と協力して複数の適応拡大と段階的な臨床開発の実現を目指しています。

経営方針

同社は長期的な成長に向けて明確な数値目標を掲げています。2030年ビジョンでは「フェーズ3に進む新規分子を5つ」「ラベル適応を10件」「治療を受けている患者数を5万人」に到達することを目指しています。現在はVYVGART(IV/SC)による売上が主力で、既にVYVGART HYTRULOは2023年に米国で承認を取得しており、今後は自己投与用のペン型剤(PFS)承認と米国でのローンチを重要な商業マイルストーンとしています。成長資金面では2023年の公募で純収入約12億ドルを確保しており、研究開発と商業基盤の両方に投資する余地を持っています。

研究開発と差別化の面では、同社は「FcRn(新生児Fc受容体)領域でのリーダーシップ」を強みとしています。FcRn阻害剤の代表的な製品であるefgartigimodを新適応で展開するほか、empasibrubartやARGX‑119などの候補を進めています。独自の社内プログラム(IIP)も活発で、直近ではIIPプログラムが11件、IND(臨床試験開始届出)が5件程度「進行中・進捗中」として報告されており、外部とのライセンスや技術提携(例:HalozymeのENHANZE技術への出資・最大9500万ドルのマイルストーン条項、AgomAbへの利益分配など)を活用して、皮下注投与や自己投与といった使いやすさで差別化を図っています。ここでいうENHANZEは、薬を皮下注で投与しやすくする技術と理解すればわかりやすいです。

新市場開拓と事業拡大については、同社はグローバルな販売体制の強化を重視しています。既に主要適応である重症筋無力症(gMG)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP・日本のみ)での商業化実績があり、今後は米国での自己投与承認後の迅速な上市や新規流通パートナーの締結を通じて患者アクセスを拡大する計画です。一方で製造は外部の受託製造機関(CMO)に依存しており、同社は品質基準(GMP)と供給安定性の管理に重点投資する方針を示しています。

技術革新への取り組みは企業文化にも組み込まれており、「argenx Way」としてイノベーションを全社で推進することを謳っています。経営陣の業績評価にもパイプライン進展やイノベーションの指標が組み込まれており、特定の臨床導入目標(INDの達成、臨床試験での最初の患者ランダム化、PFS自己投与の承認など)を明確に設定している点が特徴です。さらに特許出願や学術発表を通じて学術・知財面での強化を図り、長期的な競争優位を築くことを重視しています。