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Aqua Metals, Inc.AQMS
事業内容
Aqua Metals, Inc.は、独自のAquaRefining技術を用いて使用済みバッテリーから金属を回収・精製するリサイクル事業を展開する企業です。同社は水を使った工程で鉛電池やリチウムイオン電池から価値のある金属を取り出す研究開発と実証プラントの運用に注力しています。
これまでの収益は主に鉛化合物やプラスチック、鉛地金の販売から得てきましたが、現在はリチウムイオン電池由来の高価値金属の回収・販売と技術ライセンスによる収益化を目指しています。同社は製造業者やリサイクル事業者、現地パートナーとのライセンスや合弁を通じて事業を拡大する戦略を取っています。
事業の中身は研究開発、パイロットプラントの運用、そしてライセンスや共同事業を軸にした単一セグメントでの展開です。パイロットではリチウム水酸化物や銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の回収に成功しており、第一フェーズで年間約7,000トン処理を想定したリサイクル拠点の整備を進めています。
経営方針
同社はリチウムイオン電池リサイクルの商業化を最優先課題と位置づけ、まず米国内の再開発中の敷地約5エーカーの施設に初の商業規模Li AquaRefiningラインを設置し、年約7,000トンの処理能力を目指しています。これまでの累積売上高は2024年末時点で約1,170万ドルで、直近はパイロット段階から商業化への移行期にあり、設備投資として2024年に約350万ドルを資本化しています。利益は配当せず事業に再投資する方針で、事業拡大に向け追加の資金調達やパートナーシップ構築が必要である点も明示しています。
同社は重点投資を技術開発とプラント建設、そして人材のインセンティブに置いています。具体策として経営陣向けに2024年12月に長期インセンティブ制度を承認(RSU 474,454株、PSU 158,817株)し、第一トランシェ達成で従業員に118,469 RSUを発行するなど人件費連動の報酬で人材確保を図っています。差別化戦略はAquaRefiningのプロセスにあり、従来の高温製錬と比べ低温での処理により排出やエネルギーを抑えつつ金属回収を可能にする点で、2024年のパイロットではリチウム水酸化物、銅、ニッケル、コバルト、マンガン二酸化物の回収に成功しています。
新市場開拓では、同社は自社運営による商業施設の立ち上げと並行して、ライセンス供与や合弁による地域展開を目指しています。まずは米国拠点での安定稼働を優先し、その後メキシコや中国など海外で現地パートナーと事業展開を模索する計画です。ただし現時点でライセンスやJVの確定契約はなく、資金面では2023年にSummitからの3百万ドル借入や、2024年12月の私募で計1.5百万ドルのシニア・ノート発行(うち経営陣・取締役らが約1.2百万ドルを引受)といった短期資金確保を行っている反面、将来の希薄化リスク(2024年末で予約済み株式約3,926,145株、発行済株式約8.29百万株)や追加調達の必要性は投資判断に影響します。
技術革新への取り組みは同社の中核で、ネバダ州マッカランのイノベーションセンターでAquaRefiningのリチウム電池応用を研究・試作しており、実使用規模での回収実績を積み上げています。特許出願やプロセス改良を継続しつつ、商業スケールでの運転安定化とコスト低減に取り組んでおり、技術的優位性をもってライセンスモデルを成立させることを目指しています。一方で従来の業界慣行や規制、外部アナリストの評価、既往の訴訟対応といった外的要因が事業評価や株価に影響するため、品質保証とガバナンス強化も並行して進めています。