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AMERICAN TOWER CORPAMT
事業内容
AMERICAN TOWER CORPは、マルチテナント型の通信不動産を世界的に所有・運営し、通信設備を置くスペースの賃貸を主力とする不動産投資信託です。同社は主に携帯電話基地局向けの鉄塔や屋上、代替構造物の賃貸を行い、近年はデータセンターや光ファイバーなど接続・電力・冷却を伴う施設にも投資しています。
同社の主要顧客は大手移動体通信事業者や放送事業者、クラウド事業者やインターネットサービスプロバイダー、政府機関や自治体など多岐にわたります。収益は長期賃貸契約に基づく安定した賃料が中心で、物件賃貸を主体とするプロパティ事業が売上の大部分を占め、現地での設置支援などのサービス事業は売上全体のごく一部にとどまります。
同社の事業は大きく物件事業とサービス事業に分かれ、物件事業には通信塔や屋上スペースの賃貸に加え、データセンターでのスペース・電力・相互接続といった提供、光ファイバーや土地利権、共有バックアップ電源の提供などが含まれます。サービス事業は用地取得や許認可の取得支援、構造評価やマウント解析、工事管理といったテナントの導入・拡張を支援しており、既存資産の稼働率向上を図っています。
経営方針
同社は成長を「既存資産の稼働率向上」と「選択的なポートフォリオ拡大」の両輪で実現することを目指しています。具体的には、保有する通信サイトに追加テナントを入れることで最も高い追加収益を得る方針で、資本配分の目標としては1株当たりの調整後営業キャッシュフロー(AFFO)と投下資本利益率の長期的な向上を掲げています。財務の健全性も重視しており、投資適格の格付けを維持するとともに、2024年12月31日時点で約120億ドルの流動性を確保している点や、REITとして課税対象所得の少なくとも90%を配当する制度要件を踏まえて配当と投資を両立させています(2024年の普通配当は1株当たり6.56ドル)。
重点投資分野では従来の通信塔に加え、データセンターや電源ソリューションに注力しています。2021年のCoreSite買収によりデータセンター事業を取り込み、エッジコンピュートという新たな需要で既存塔資産の価値を高めることを狙っています。また、取得基準はリスク調整後のハードルレートを満たす案件に限定し、初期入居率が低くても長期的にテナントを増やせる資産を重点的に取得する方針です。加えて、構造解析や許認可対応、工事管理など自社で提供するサービスにより導入サイクルを短縮し、競合との差別化を図っています。
新市場や事業拡大については国別の経済・通信環境を慎重に評価した上で進出と撤退を判断する disciplined なアプローチを取っています。過去にはメキシコのファイバー事業やポーランド事業を2023年に、オーストラリア・インド・ニュージーランドの事業を2024年に一部売却して資金を再配分するなど、事業ポートフォリオの最適化を行ってきました。さらにStonepeakとの共同開発やジョイントベンチャーを通じたデータセンター開発といった外部資本の活用も進め、残存する株買戻し枠(約20億ドル程度)や社債・銀行借入等で柔軟に資金調達を行う方針です。
技術革新と運営効率化にも注力しており、同社はシステム投資や人材育成を進めて主要業務の処理時間短縮(リーシングや構造解析など)を目指しています。サステナビリティ面では化石燃料依存を下げるための電源ソリューションや「パワー・アズ・ア・サービス」構想を展開し、ネットワーク運用全体の効率向上を図っています。加えて、資産管理面では塔の経済耐用年数を20年から30年に延長する会計上の見直しを行い、長期的な資産価値とコスト配分の最適化も進めています。