Allot Ltd.ALLT

時価総額
PER
通信機器とネットワークセキュリティの有力企業。DNI技術搭載のネットワーク検知、SECaaSと保守サポートを展開。2024年の売上の約43%がチャネル経由、2025年3月時点で最大株主が22.1%保有、2022年12月の子会社買収。北米・欧州・アジアを中心に世界展開。

事業内容

Allot Ltd.は通信事業者向けにネットワーク管理とセキュリティのハードウェア・ソフトウェアを開発・販売しています。主力はネットワークのトラフィックを詳細に解析する技術(Deep Network Inspection、DNI)を核としたプラットフォームと、事業者が自社顧客向けに提供するセキュリティ機能やサービスです。

同社の顧客は通信キャリアやケーブル事業者、データセンター、企業(政府機関・金融機関・教育機関など)やプライベートネットワークに及び、販売代理店やリセラーを通じた販売が重要な収益源となっています。2024年は約43%の売上がチャネル経由で発生し、多くの場合パートナーが導入と一次サポート(Tier1)を担当し、同社は技術支援やエスカレーション対応を行っています。

事業構成としては、DNIを活用したネットワーク・インテリジェンス製品群と、事業者向けのセキュリティ製品およびSECaaS(セキュリティサービス)を軸に展開しています。これらに加えハードウェア端末、ソフトウェアプラットフォーム、クラウド型サービス、さらに導入支援やトレーニング、保守契約といったプロフェッショナルサービスで製品ライフサイクル全体を支え、保守・サポート収入の拡大で収益の安定化を図っています。

経営方針

同社は近年、売上構成の転換と収益性改善を成長の中心課題と位置づけ、サービス型収益(特にSECaaS)へのシフトで安定的なリカーリング収入の拡大を目指しています。実際に2024年は製品売上が3010万ドル(前年比‑20%)に落ち込む一方で、サービス売上が6210万ドル(前年比+12%)となり、総売上に占めるサービス比率は67.4%にまで上昇しました。加えて総粗利率は2023年の56.6%から2024年は69.1%に改善しており、同社はこの収益構造の改善を受けて「収益性の早期回復」を目指しています。

同社は重点投資分野としてセキュリティ・アズ・ア・サービス(SECaaS)とネットワークインテリジェンス(DNI)を掲げ、ネットワーク事業者向けに差別化された提供を行うことで競合との差別化を図っています。差別化の核はネットワーク上で直接稼働する「ネットワークネイティブ」なアーキテクチャと、導入・運用の容易さ(いわゆるゼロタッチ運用)にあり、製品側の高付加価値化とサポート体制強化により、プロダクトの平均粗利(製品64.4%、サービス71.4%)を引き上げています。また販売構造ではチャネル経由の売上が2024年で約43%を占めるため、代理店支援や導入支援に投資して販売効率を高めています。

新市場開拓と事業拡大は、大口の通信事業者や戦略顧客を優先する方針で進められています。従来の多数の小口SECaaS契約から、最低収益保証などを付した大口の戦略アカウントへとターゲットを絞り、契約数は減らしても合計の売上ポテンシャルを維持することで早期に黒字化を図る計画です。地域展開面では北米・南米・欧州・中東・アフリカ・アジア太平洋に組織を置き(スペイン、フランス、シンガポール、インド、日本などに拠点)、大手キャリア向けの長期案件獲得を通じて導入規模の拡大を目指しています。

技術革新については特許出願やコア技術の保護を継続しつつ、研究開発の効率化でリソース配分を見直しています。2024年の研究開発費は2770万ドルで、前年の4220万ドルから34.4%削減されましたが、同社はこの合理化を通じて開発テーマを絞り込み、既存製品の機能強化(追加のセキュリティ機能、アプリケーション識別精度、管理ツールの統合など)と市場投入のスピード向上を図っています。加えて情報セキュリティ管理(ISO27001等)の認証維持や外部による侵入テスト導入など運用面の投資も続け、製品とサービスの信頼性向上で差別化を図る方針です。