Alector, Inc.ALEC

時価総額
$1.4億
PER
神経変性疾患治療薬の開発の有力企業。血液脳関門輸送のABC技術と毒性タンパク除去・蛋白補充を目指す候補薬群を展開。2024年1月19日の公募で7,110万ドル調達、AbbVieやGSKとの提携あり。米国拠点で臨床開発を推進。

事業内容

Alector, Inc.は神経変性疾患向けの新薬を開発するバイオテクノロジー企業です。同社は毒性のある誤ったたんぱく質の除去、欠損たんぱく質の置換、免疫や神経細胞の機能回復を目指す遺伝学に裏付けられた治療法を開発しています。独自の血液脳関門輸送技術(ABC)と抗体・たんぱく質工学を組み合わせ、脳内への薬剤到達と有効性の向上を図っています。

主要な顧客は大手製薬企業などの協業先と、将来的には患者や医療機関です。同社の収益は共同研究・ライセンス収入やマイルストーン、将来の製品売上を見込む構成で、研究開発中心のため現状は営業損失が続き資金は提携や公募増資、借入で賄っています。直近では複数の提携契約や資金調達で運転資金を確保しており、公開情報では2026年までのキャッシュランを想定しています。

事業は臨床段階の候補品と前臨床パイプラインに分かれます。同社は臨床候補にlatozinemab(AL001)やAL101(GSK共同)などを抱え、前臨床ではADP037-ABC(アミロイドβ標的)、ADP050-ABC(GCase置換)、ADP064-ABCなどタウやその他標的のプログラムを選定して進めています。加えて、遺伝学に基づくターゲット探索やバイオマーカー主導の患者選定を重視し、探索から開発・商業化まで一貫して価値化する方針です。

経営方針

同社は遺伝学で裏付けられた薬を軸に、研究から開発、最終的な販売までを自前で一気通貫に行う「フルインテグレーテッド」企業を目指しています。短期的な資金体力としては、2024年12月末時点で現金・現金同等物と有価証券で約4億1,340万ドルを保有し、同社の試算ではこの資金で2026年までの運営資金を確保できる見込みです。資本調達手段も複数持っており、S‑3で最大4億ドルの上限を設けた棚上げ登録や、最大1.25億ドルの随時公募枠、さらに最大5,000万ドルの借入枠も確保しているため、臨床開発を進めるための資金調達余地を残しています。

同社が重点投資する分野は「有害な異常タンパクの除去」「欠損タンパクの補填」「免疫・神経細胞機能の回復」の三領域で、これらを遺伝学的に裏付けられた標的に対して狙い撃ちする点で差別化を図っています。具体的には抗体やタンパク質の設計技術を強化し、患者選別や薬の効果確認に用いるバイオマーカーや社内アッセイの整備に投資しています。臨床パイプラインにはlatozinemab(AL001)や共同開発中のAL101/GSK4527226のほか、ADP037‑ABCやADP050‑ABC、ADP064‑ABCといった脳内標的向けの候補群があり、遺伝学と生物学の両面での裏付けを持つ薬を優先的に進めています。

新市場の開拓や事業拡大は、単一の標的で複数の適応症を狙う「適応拡張」と、外部企業との戦略的提携を組み合わせて進める方針です。同社はこれまでに3件のライセンスや共同開発等の契約を締結し、そのうち1件が現在も有効で、今後も開発リスクや資金負担を分散するための協業を選択肢に入れています。加えて、候補薬の中からADP037‑ABCとADP050‑ABCをリード候補として選定し、IND(治験申請)準備段階に進めることを計画している点は、臨床ステージへの前倒しを図る具体的な施策です。

技術革新面では、同社独自の「Alector Brain Carrier(ABC)」という血液脳関門通過技術を選択的に適用し、脳への薬剤到達性を高めて低用量での有効性獲得を狙っています。また、バイオインフォマティクスや社内の解析ツールを進化させる投資を継続し、標的選定から前臨床、臨床までのトランジションを速める体制を整えています。研究開発体制の規模は2024年末でフルタイム従業員238名程度であり、人的リソースの最適化(人員削減を含む)で資源配分を重点化することで技術と開発速度の両立を図っています。