AGILYSYS INCAGYS

時価総額
$34.8億
PER
ホスピタリティ向けソフトウェアの最大手。POS、PMS、サブスクとクラウド型運用を含むエンドツーエンドソリューションを展開。2024年8月のBook4Time買収(約1.48億ドル)と2022年1月のResortSuite買収。米国本拠地、2018年インド開発拠点開設、国際売上は2025年10%。

事業内容

AGILYSYS INCは、ホテルやリゾート向けに業務を一体化するソフトウェアと関連サービスを提供する企業です。主力は販売時点管理(POS)や宿泊管理システム(PMS)、在庫・購買管理などを含むエンドツーエンドのソリューションで、クラウド型の定期利用サービスや保守、導入支援も手掛けています。

同社の主要顧客はホテル、リゾート、カジノ、クルーズ船、ゴルフ場、スパ、ケータリング事業者など宿泊・サービス業が中心で、顧客基盤は細分化されています。収益は「製品(ソフトと一部ハード)」「サブスクリプションと保守」「プロフェッショナルサービス」の三本柱で構成され、近年はサブスクリプション比率の向上を戦略に据えています。

事業は公式に三つのセグメントで管理しており、製品売上はライセンスとハード販売、サブスクリプションは場所や決済ポイント単位の定額収入、プロフェッショナルサービスは導入やカスタマイズ、コンサルで成り立っています。近年はBook4TimeやResortSuiteの買収で予約・体験管理領域を拡充し、インドや北米の開発拠点を活用して機能強化と統合性向上を進めています。

同社は定期収入の割合を増やしつつ研究開発投資で競争力を高める方針を取っていますが、人材確保や主要仕入先への依存、業界の景気変動といったリスクも存在するため、投資家はこれらの点を踏まえて評価する必要があります。

経営方針

同社は成長を収益構造の転換によって実現しようとしています。2025会計年度の総売上高は275,624千ドル(約2.76億ドル)で、その内訳は製品売上が41,324千ドル、サブスクリプションと保守が170,051千ドル、プロフェッショナルサービスが64,249千ドルでした。特にサブスクリプション収入は2024年度から約23%増加しており、同社はクラウド型サービスや継続課金型の比率を高めることで安定的なリカーリング収入の拡大を目指しています。配当は2024・2025年度ともに支払っておらず、取締役会は将来もしばらくは利益を事業投資や買収資金に留保する方針です。

同社は研究開発と顧客サービスを重点投資分野と位置づけ、差別化を図ろうとしています。具体的には既存の販売・宿泊管理などのソフトをクラウド対応に強化し、導入後のサポートや運用サービスを組み合わせて顧客ロイヤルティを高める戦略です。一方で主要ハードウェアや一部ソフト供給業者の集中依存や、ソフト開発人材の確保がリスク要因となるため、人材採用・育成やサプライヤー管理に資源を割くことも明確に打ち出しています。研究開発への継続投資は競争力維持に不可欠と考える反面、投入した資金が短期的に収益に結びつかない可能性がある点も社内で認識されています。

同社は新市場開拓や事業拡大を買収と国際展開で加速させています。直近ではスパ向けクラウド管理のBook4Timeを2024年8月に買収し、純支出で約1.46億ドル(購入対価148.28百万ドル、買収に伴うのれん約104百万ドル、識別可能な無形資産約61百万ドル)を投じてソリューション幅を拡大しました。買収資金の一部は2024年8月に設定したリボ型の与信枠で賄われており(適用金利はSOFR+1.625%など、返済猶予は2027年8月まで)、同社は買収を通じて顧客ごとの提供サービス拡大と国際比率の引き上げ(2025年度の国際売上比率は約10%)を狙っています。

同社は技術革新を成長の中核と位置づけ、製品開発とクラウド移行に注力しています。45年以上の業界経験を活かし、オンプレミスからクラウド型へと製品群を進化させること、インドの開発拠点や自社の研究開発投資によって機能強化を進めることを掲げています。これに伴い無形資産やのれん(2025年時点でのれんは約130.6百万ドル、無形資産は約70.8百万ドル)を有しており、将来的な価値低下リスク(減損)や短期的な利益圧迫の可能性を管理しながら、製品差別化と運用効率の両面での技術的優位を確保する方針です。