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AGNC Investment Corp.AGNC
事業内容
AGNC Investment Corp.は主に米国の住宅ローン担保証券に投資する公開の不動産投資信託(REIT)です。同社は利回りを得ることを目的に証券の買入れとリスク管理を組み合わせた運用を行っています。
主要な顧客は株主や優先株の投資家で、同社の収益は保有証券からの利息収入から借入コストやヘッジ費用を差し引いた純利息収入と、売却による実現損益や時価評価の差益が中心です。同社は得た収益を定期的な配当として還元し、資金調達では投資家や短期の担保付き借入に依存しています。
投資の中身は政府支援機関が保証する住宅ローン担保証券(Agency RMBS)を主軸に、TBA(先渡し)契約、信用リスク移転商品(CRT)、非政府系の住宅ローン担保証券や商業用MBSなど幅広く保有しています。資金調達は主にレポ取引で行い、金利変動や前倒し返済リスクには金利スワップ等でヘッジし、経営判断は単一の事業セグメントとして一元的に管理しています。
経営方針
同社は長期的に良好な株主リターンと高い配当利回りを両立させることを成長戦略の中心に据えています。具体的には投資収益(利息収入や実現損益)を最大化しつつ、自己資本効率を高めることで1株当たりの有形簿価(2024年末の有形簿価は1株当たり約$8.41)を向上させることを目指しています。2024年の総資産は約$88.0 billion、投資証券の時価は約$66.3 billion、株主資本は約$9.8 billionで、同社は安定的な配当政策(普通株の年間配当は2024年に$1.44/株)を維持しつつ、資本調達は市場状況や株主価値への影響を厳格に勘案して実施しています。例えば、同社は普通株を発行する際は増資が有形簿価や利益に寄与すると判断される場合に限定し、費用対効果の観点から優先株についても発行を抑制する方針です。
重点投資分野は主として政府系保証のある住宅ローン証券(Agency RMBS)で、これらは連邦住宅金融機関や政府機関が元本・利息を保証するため、流動性と資金調達面で利点があります。加えて信用リスク移転(CRT)証券や民間発行の非エージェンシーRMBS、商業不動産担保証券(CMBS)など、住宅や不動産関連の幅広い資産にも選別して投資しています。差別化の要点は内部運用体制と積極的なリスク管理にあり、最高経営責任者が事業全体の投資・ヘッジ判断(TBAポジションや金利スワップなど)を統括する単一セグメント運営と、複雑な利回り・プリペイメントのモデリングを駆使して資産構成を動的に最適化している点です。また、資金調達は主に流動性の高いレポ(リポ)取引を活用しており、リポ残高は約$60.9 billionにのぼることで低コストのレバレッジを実現しています。
新市場開拓や事業拡大では、同社はコアのAgency RMBSに加えて、マーケットのバリューチャンスに応じてCRTや非エージェンシー、CMBSなどへ段階的に拡大する柔軟性を保っています。同社は余剰の資本政策として公募・即時売却(ATM)枠を維持しており、2024年末時点で約$1.2 billionの発行枠が残っているほか、自己株式買い戻し枠も約$1.0 billion分を確保しています。こうした資本施策により、市場価格が有形簿価を下回る局面では買戻しを行い、逆に発行が株主価値に寄与する局面では増資を行う、といった機動的な資本配分を通じて事業拡大と株主価値の両立を図っています。
技術革新への取り組みとしては、サイバーセキュリティ対策の強化と高度なポートフォリオ分析システムの両輪で運用リスクと事業継続性を守っています。同社はNISTのフレームワークに沿った体制を整備し、最高技術責任者(CIO/CTO、CISSP保有者)が四半期ごとに取締役会の監査委員会へ報告、外部の侵入テストや第三者評価を定期実施しています。加えて、投資判断では償却・プリペイメント予測を反映する精緻なモデルや時価評価ツールを活用し、デリバティブやTBAを含むヘッジ運用と連動させることで、金利変動や流動性リスクに対する耐性を高める技術的基盤を整えています。