AGCO CORPAGCO

時価総額
$74.7億
PER
農業機械と精密農業技術の大手。トラクターやクラウド型精密農業プラットフォームを展開。2024年4月1日にPTx Trimbleに85%出資、2024年11月1日にG&P事業を7億ドルで売却。北米・南米・欧州・アジアで展開。

事業内容

AGCO CORPは世界的な農業機械メーカーで、トラクターやコンバイン、散布機や播種機などの主要な農業機械とその部品、アフターサービスを提供しています。近年はエンジン生産や精密農業向けのデジタルソリューションにも注力しています。

同社の主要な顧客は農家と独立系の販売ディーラーで、製品はディーラーネットワークを通じて小売されます。収益は新車販売に加えて部品・整備、農業向けの金融サービスやソフトウェア・データサービスからも得ており、欧州・北米・南米など地域別に売上が分散しています。

事業はおおむね農機本体、部品・サービス、精密農業技術、金融の領域に分かれています。代表的な取り組みとしては自社製トラクターやコンバインに加え、同社のエンジン部門や精密農業プラットフォームとの連携で機械とデジタルを組み合わせたソリューションを提供しています。製造は世界各地の拠点で行い、ディーラー支援や保証制度で販売網の競争力を高めています。

経営方針

同社は高収益化を優先する成長戦略を掲げており、事業ポートフォリオの最適化を進めています。具体的には、2024年11月に穀物・プロセッシング関連のG&P事業を約7億ドルで売却し、より高い付加価値が見込める農機・精密農業技術に経営資源を集中させています。加えて、2024年4月にPTx Trimble合弁(AGCOが85%を保有)を約19.54億ドルで取得し、精密農業分野での規模拡大を図っています。同社は構造改革として実施中のコスト削減プログラムで年率約1億〜1.25億ドルのランレート効果を目指しており、2025年は販売減の見込みの中でも収益性改善を図る方針です。

同社の重点投資分野は精密農業技術と販売・サービス網の強化です。PTx Trimbleを通じて、機械本体に加えハードウエア、ソフトウエア、クラウド型アプリを作物サイクル全体にわたり提供する「混在機対応プラットフォーム」を構築し、他社との差別化を図っています。また、FarmerCoreというディーラー支援と顧客体験の統合プログラムを2024年に立ち上げ、販売店向けのデジタルツールや在庫・アフターサービス支援を段階的に拡大することで、販売チャネルと顧客ロイヤルティを強化しています。製造面では既存の全球生産拠点を活用しつつ、部品供給と在庫管理の効率化に投資しています。

新市場開拓と事業拡大については、新興国での生産・販売基盤の拡充を継続しています。インドやアフリカなどでの現地生産・サプライチェーン構築や販売網の整備を進める計画で、買収や提携も成長手段として用いてきました。一方で、PTx Trimbleのような大規模統合では統合コストやグッドウィルの評価リスク(2024年にはPTx Trimble関連で約3.51億ドルの減損計上)もあり、同社は取得資金を社債や借入、手持ち資金で調達するといった資本配分を明確にし、株主還元では2024年に四半期配当0.29ドルと特別配当2.50ドルを実施、自己株式買い戻しも加速(2024年11月にASRで2,200万ドル、買戻し余地は約3,500万ドル)するなど、成長投資と株主還元の両立を図っています。

技術革新への取り組みでは、精密農業の製品群とデータサービスを連携させることを最優先としています。PTx Trimbleの技術を取り込み、異なるメーカーの機械でも使える互換性のあるソリューション提供を進めることで、農家の導入障壁を下げる狙いです。また、サイバーセキュリティにも重点投資しており、NIST のフレームワーク等を基にCISO(最高情報セキュリティ責任者)主導で年次評価や外部専門家による監査、従業員向け訓練を実施しています。2012年(注:資料内では2022年)にランサムウェア被害を受けた経験を踏まえ、システム復旧と防御力向上に資源を投じており、技術面と運用面の両方で再発防止と製品競争力の向上を図っています。