AMERICAN FINANCIAL GROUP INCAFGD

時価総額
$114.5億
PER
特化型損害保険の大手。農業、旅客・貨物輸送、引越し・倉庫向けの代替リスク移転や特殊補償を36事業体で展開。2023年7月3日に作物保険の代理店を234百万ドルで買収。従業員約8,700人、米国中心に展開。

事業内容

AMERICAN FINANCIAL GROUP INCは、主に特化型の損害保険を手掛ける保険持株会社で、商業向けの保険やリスク共有・代替リスク移転プログラムを中心に事業を行っています。同社は旅客輸送や引越・倉庫、トラック業界などリスクの高い分野に対して高い自己負担を前提としたカバレッジや損失防止サービス、代理店向けの独自手数料設計などで顧客と利害を一致させる仕組みを提供しています。

同社の主要顧客はバス・トラック事業者、引越・保管業者、農場や農業関連事業、建設業者、金融機関、非営利・社会福祉団体など多岐にわたります。収益は主に保険料収入(グロス・ライテンプレミアム)とその運用収益で成り立ち、独立系代理店を通じた販売や専門プログラムの手数料構造が収益の柱になっています。

事業は複数の専門サブセグメントで展開しており、代表的には(1)不動産・輸送系:商業自動車保険、モーター貨物や海上貨物、建物や設備、農業向けの作物保険など、(2)特化型賠償:超過・余剰賠償、役員・専門職賠償、一般賠償、労災や特定市場向けのカスタムプログラム、(3)金融系:誠実保証・請負保証、貸付・リース向けの保険、貿易信用保険があります。各ユニットは地域・分野ごとに引受やクレーム対応の権限を持つ分散型モデルで運営し、市場状況に応じて買収や新分野への拡張で成長機会を追求しています。

経営方針

同社は長期的に1株当たり簿価の年率「二桁成長」を目指しています。財務力を背景に、2024年は純利益約8.87億ドル、営業活動によるキャッシュフローが約11.5億ドルを確保し、株主還元として2024年に約7.91億ドルの配当を支払っています。時価総額は直近の第2四半期終値で約88.2億ドル、発行済株式数は約8,398万株(2025年2月1日現在)と、安定した資金基盤を活用して成長投資と株主還元の両立を図る方針です。同社はこの資本配分で収益性の高い成長を実現することを目指しています。

同社は投資の重点を「スペシャリティ(専門領域)を深めること」に置いています。主要な事業は車両・輸送や物損・海上(Property&Transportation)、超過損害や役員賠償などの責任系(Specialty Casualty)、金融関連の保証や与信保険など(Specialty Financial)で、業界の特殊リスクに特化した商品設計と引受で差別化しています。具体的には、旅客輸送やトラック業界向けのリスク共有プログラム、高い自己負担を前提とした労災商品、代理店向けの業績に連動する報酬構造などを提供し、顧客・代理店と利益を整合させる仕組みを強化しています。専門性を支える体制として、従業員約8,700人(うちGreat Americanに約7,800人)が在籍し、離職率は7.1%、平均勤続年数は約10.1年と高い定着を実現しており、これが引受ノウハウの蓄積につながっています。

新市場の開拓や事業拡大は、選択的なM&Aと自社立ち上げを組み合わせた積極的かつ収益志向の手法で進めています。直近では2023年7月に作物保険の仲介大手であるCrop Risk Servicesを現金234百万ドルで買収し、買収対象の2022年保険料は約12億ドルであったことから同社は米国作物保険市場での地位を強化しました。2024年も小規模な保険代理店やコンサル会社を数百万ドル規模で取得しており、新規分野への拡大は「収益性基準」を満たす案件に限定する戦略です。また、投資ポートフォリオでは有価証券や不動産・プライベートエクイティへの出資を通じて収益の多様化を図っており、出資約22.77億ドル(持分法投資の簿価)や未約束資本約4.57億ドルといったキャピタルを戦略的に活用しています。

技術革新については、データ分析や自動化、人工知能(AI)・機械学習の活用を検討・導入しつつ、その運用に伴うリスク管理と内部統制の強化を同時に進めています。具体的には、価格設定や引受判断、損害防止サービスの高度化にデータ解析を取り入れ、代理店や顧客向けのサービス改善を図っています。一方でAIの誤作動や誤判断が引き起こす引受ミスや請求過支払いのリスクも認識しており、同社はパイロット導入と段階的拡大、監視体制の整備によって安全に技術導入を進めることを目指しています。