AerCap Holdings N.V.AER

時価総額
PER
航空機リース事業の最大手。2,018機の保有・管理・発注ポートフォリオ、エンジン管理と部品販売を展開。2021年11月のGECAS買収と2024年に約175億ドルの資金手当を実施。本社をダブリンに置き、北米・欧州・アジア中心に展開。

事業内容

AerCap Holdings N.V. は世界有数の航空機リース会社で、航空機やエンジンを購入して航空会社に貸し出すリースを主力事業としています。同社は購入・リースバック取引や保有機の売買、リース後の運航管理まで一貫して手がけています。

顧客は世界各地の約300社の航空会社や運航事業者で、定期的なリース料が主な収益源となり、加えて機体や部品の売却益や管理手数料も収入に寄与しています。同社は多様な金融手段で資金を調達し、その資金を新規機材の取得やポートフォリオの最適化に充てています。

事業は大きく、航空機を貸し出す保有・運用、機体やエンジンの部品販売・分解・流通、さらに第三者向けの資産管理や事務・資金管理サービスに分かれています。同社は共同出資会社を通じた予備エンジンの運用などで収益を多角化し、機材の取得・配置・売却を通じてポートフォリオの価値向上を図っています。

経営方針

同社は持続的な成長と株主還元の両立を成長戦略の中心に据えています。具体的には、2024年に資本市場や銀行借入などで175億ドルの資金調達を行い、回転可能な与信枠として113億ドルの未使用枠と12億ドルの自由に使える現金を確保するなど、流動性を厚くして成長投資に備えています。ポートフォリオ面では2030年までに納入予定の新造機296機(エンジン85基、ヘリ11機を含む)を受注しており、2024年は新造機92機を購入、保有・管理中の機材は約2,018機、総資産は約710億ドルと規模の拡大に向けた明確な数値目標を持っています。加えて、株主還元策として年間約2億ドル(四半期約5,000万ドル)を目安とした配当政策を採用し、自己株式買い戻しも積極的に実行しています(2024年は約1.5億ドル相当、2023年は約26億ドル相当を買戻し)。

同社は飛行機・エンジンを中核資産とする点に重点投資を行い、差別化は「規模」と「運用力」で図っています。大手メーカー(Airbus、Boeing、Embraer)との大量発注による価格交渉力や納入枠の確保、そしてリース後の再販・リマーケティング能力を武器に、購入(新造・中古)、航空会社との売却後リースバック、リフリーティング支援などで収益を最大化しています。さらにエンジン供給を担うSES(サフランとの合弁)や部品・解体系を扱うAerCap Materialsといった事業体を通じて、エンジンプールや部品供給で差別化し、リース機材の稼働率向上と耐久的な収益確保を図っています。

新市場開拓と事業拡大については、地域・顧客基盤の多様化とサービス拡充を明確に打ち出しています。世界各地のおよそ300社の顧客ネットワークを活用して新機材の配置や既存機材の再配置を行い、地域ごとの集中リスクをモニタリングしつつリスク分散しています。また、共同事業や資産管理契約を通じて他社保有機材の管理収益を取り込むことで収益源を多様化しており、発注機材の納入によるトレーディング機会や機材売却によるキャッシュ創出を通じて成長余地を追求しています。

技術革新への取り組みでは、新世代機の導入とデジタル化投資により稼働効率を高める戦略を採っています。ポートフォリオに占める「新技術機(A320neo、737 MAX、787など)」の比率は2024年で約74%と高く、メーカーと協調して新機種設計に参加することで想定残存価値の向上に努めています。加えて、資産管理やメンテナンスの効率化に向けた情報システム投資、サイバーセキュリティ強化、金利ヘッジ等の金融リスク管理を行い、稼働停止期間の短縮と運用コスト低減によって長期的な収益性を高める取り組みを進めています。