Adient plcADNT

時価総額
$15.9億
PER
自動車シート供給の世界最大手。完全シートから部品までの統合生産とAI自動化を活用した製品群を展開。2021年3月のヤンフェンとのマスター契約を実施。200超の工場と従業員7万人超を擁する米州・欧州・中国中心の29か国の事業基盤。

事業内容

Adient plcは世界有数の自動車用シートのメーカーで、乗用車や商用車向けの座席システムとその部品を設計・開発・製造・供給しています。同社は研究開発から設計、工場での生産まで社内で一貫して行い、車両プラットフォームの開発段階から自動車メーカーと共同で製品を作り上げます。

主要な顧客は各国の大手自動車メーカーで、同社は長期的な取引関係と高い納入品質・納期管理を重視して収益を確保しています。収益は完成したシートの一括供給と、フレームやクッションなどの個別部品供給が中心で、世界各地の生産拠点を通じた大量生産とジャストインタイム納入でコスト優位を生み出しています。

事業は完成シートとシート用部品の二本柱で構成され、フレームや調整機構、発泡体、トリム(カバー)などを含みます。同社は共通部品の活用や標準化した生産プロセスで開発期間とコストを抑え、約200の工場と複数の開発拠点を通じてグローバルに供給しています。さらに自動化や人工知能の活用に投資して生産効率を高め、電気自動車や先進運転支援の進展に伴う内装ニーズの変化にも対応しています。

経営方針

同社は世界的な自動車シート供給でのシェア拡大と株主還元の両立を目指しています。グローバルで約70,000人の従業員が200ヵ所以上の生産拠点(29か国)を運営しており、主要OEMとの長期取引を軸に成長を図っています。実際に、2023会計年度は生産増加により売上が4.31億ドル増加(内訳:生産ボリュームによる増収5.11億ドル、価格効果8,700万ドル、為替等で1.24億ドルの逆風)し、調整後EBITDAは9,400万ドル増加しました。加えて同社は自己株買いによる資本効率改善も進めており、2023会計年度に6500万ドル、2024会計年度に2.75億ドルを取得、2024年9月30日時点で残り2.6億ドルの買戻し枠を有しています。

同社は生産効率と原価競争力の強化を重点投資分野としています。標準化した生産プロセスや統合されたモジュラー組立により在庫最適化や輸送・人件費削減を図り、高い稼働率を維持することを目指しています。製品面では「コア・プロダクト・ポートフォリオ(CPP)」による部品と設計の再利用で開発期間とコストを削減し、世界10拠点の開発センターや中国における37拠点(22都市、6社の合弁含む)といったグローバル開発・生産網を差別化要因にしています。

同社は新市場開拓と事業ポートフォリオの再編を通じて中期的な収益改善を目指しています。東南アジアなど地域展開の加速、完成車メーカーの地域展開に合わせた市場シェア拡大、部品分野での垂直統合検討により収益源の多様化を進めています。また、同社は2026会計年度からより収益性の高い事業の本格寄与を見込み、当面の構造改善や資本支出の削減、採算の悪い契約の期満による整理でキャッシュ創出を強化することを目指しています。一方で、EMEA事業については2024年9月30日時点でののれんが3.41億ドル残存しており、長期の営業利益率が平均5.5~6.5%程度に回復することを前提に減損回避を見込んでいる点は投資家が注視すべき事項です。

同社は技術革新を成長の中核に据え、自動化やデジタル化への投資を拡大しています。金属加工、ウレタン、トリム、完成シート工程での自動化導入と人工知能(AI)の活用を進め、直接人件費の削減と品質の再現性向上を目指しています。さらに、電動化や自動運転の進展に対応するためのインテリア・コンセプトや「ES3」と呼ぶ持続可能性関連の設計方針を推進し、顧客と協調した製品開発で新規参入メーカーやEV領域での採用拡大を狙っています。これらにより同社は技術面での差別化と長期的な収益性向上を目指しています。