Enact Holdings, Inc.ACT

時価総額
$59.8億
PER
住宅ローン保険の大手、市場シェアは12〜20%台。リスクベースの引受、包括的なストレステストとCRTプログラムを展開。2023年に子会社再保険事業へ5億ドル拠出、2024年12月31日時点の従業員数は421人。米国中心の展開。

事業内容

Enact Holdings, Inc.は米国の民間住宅ローン保険会社で、主に低頭金の住宅ローンに対する保険を引き受けて貸し手の信用リスクを軽減し、借り手が住宅を取得・維持できるよう支援しています。同社は住宅ローンごとに保険を付ける一次保険を中心に、保険引受や与信審査の仕組みを運営しています。

主要な顧客は銀行や住宅ローン専門会社、貸金業者などの貸し手で、これら貸し手が販売するローンの保険料が同社の主たる収入源です。同社は保険料収入を基盤としつつ、保有資産からの運用収益や再保険・リスク移転取引によって収益と資本効率を補完しています。

事業は大きく一次住宅ローン保険と再保険・リスク移転の二本柱に分かれ、一次保険は政府系機関の基準に適合する形で子会社を通じて引き受けています。再保険やリスク移転は損失の変動を抑え資本効率を高める手段として活用し、品質管理や厳格な審査、経済ショックを想定した検証を通じて引受方針や価格を調整しています。

経営方針

同社は「人々が家を買い、住み続けられるようにする」というミッションを掲げ、株主価値の最大化と安定した成長を両立させることを目指しています。資本政策では2024年5月に最大2.5億ドルの自社株買い枠を承認し、2022年に四半期配当を開始するなど株主還元を進めていますが、Genworthが少なくとも80%を保有しているため、配当や自社株買いは取締役会とGenworthの承認、債務条項や法令の制約を受けるという現実的な制約も抱えています。過去の実績では2012年以降の四半期ベースで新規保険引受における市場シェアが12.0〜20.4%の範囲にあり、同社はこの地盤を維持・拡大することを成長の数値目標の指標の一つとしています。

重点投資分野は引受の質向上、資本保全とボラティリティ低減のためのリスク管理、そして運用資産の安全性強化です。具体的には、2023年に子会社の再保険事業(Enact Re)へ5億ドルを拠出して再保険によるリスク移転と引受余力の拡大を図り、貸出適格性を自動判定する仕組みや委任審査先への教育を強化して審査品質を高めています。投資面では固定利回り資産を中心に流動性と資本保全を優先し、定期的なストレス試験でポートフォリオの耐性を確認する運用方針を取っています。

新市場の開拓や事業拡大については、再保険やリスク共有取引を通じて前方の取扱能力(キャパシティ)を最適化し、地域別貸し手や政府支援機関向けの引受余力を増やす計画です。具体策としては、再保険比率の調整や資本取引を活用して新規引受を実行可能にしつつ、顧客基盤への営業投資で販売チャネルを拡大します。従業員は2024年末時点で421名、レイリーの本社オフィスなどの既存拠点を活用して体制を整え、採算性の高い新規事業を取り込むことでリスク調整後の収益を向上させる方針です。

技術革新への取り組みでは、与信や価格付けに関するモデルや自動判定システムを実務に組み込み、モデル結果を引受基準や価格設定、再保険戦略に即時反映する運用を進めています。情報セキュリティ面では、米国のサイバーセキュリティ指針(NISTの枠組み)に沿った多層防御を採用し、侵入テストや脆弱性の定期検査、月次の従業員向け教育や安全なコード開発などを実施、主要システムの監視はGenworthと連携して行うことで運用の継続性と顧客データの保護を強化しています。