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ASCENT INDUSTRIES CO.ACNT
事業内容
ASCENT INDUSTRIES CO.は、特殊化学品とステンレス製パイプ・チューブを中核に製造を行う多角的な産業メーカーです。同社は界面活性剤や消泡剤、潤滑剤、難燃剤などの特殊化学品と、溶接パイプや仕上げの良いステンレスチューブを主力製品とし、原料由来の製品に加えてバイオ由来の代替品や試作から商業生産まで対応する受託製造サービスも行っています。
同社の顧客は石油・ガス、家庭・工業用洗剤、塗料、自動車、食品加工、上下水道など幅広い産業にわたります。特殊化学品部門では上位顧客への依存度が高く複数の主要顧客が売上の大きな割合を占める一方、管材部門はディストリビューターや機器メーカー(OEM)、最終使用者向けの販売で安定した収益を確保しています。同社は主要顧客と長期関係を築き、受注生産を通じて新製品の市場投入を支援しています。
事業は大きく特殊化学品部門と管材部門に分かれ、化学品はテネシー、サウスカロライナ、バージニアの各工場で生産しています。管材部門ではBRISMETが大型かつ長尺の溶接パイプを生産し、ASTIが自動車や建築、食品加工向けの高品質な装飾用ステンレスチューブを供給しています。両部門ともに顧客専用の専用設備と汎用設備を使い分け、配合や多工程の製造まで対応して顧客ニーズに応えています。
経営方針
同社はまず安定した収益基盤の回復と成長のための財務的柔軟性確保を目指しています。2024年は人材の再投資と自助努力により予測しやすく採算の良い運営モデルを築くことに注力し、期末は無借金、現金及び現金同等物は1,610万ドル、当座貸越枠の余力は4,740万ドルを確保しました。資本配分は事業と成長投資を優先したうえで余剰資金を株主還元に回す方針で、取締役会は2025年2月に24か月で最大100万株の自社株買いを承認しており、2025年の設備投資見込みは最大760万ドルとしています。過去の自社株買い実績としては2024年に101,263株、2023年に143,108株を取得しています。
同社は重点投資分野として主にSpecialty Chemicals(特殊化学品)とTubular Products(ステンレス鋼管・チューブ)に注力しています。特殊化学品部門は受託製造から商業規模生産まで対応するカスタム製造力と、石油由来製品に加えバイオ由来代替品を揃える点で差別化しており、上位15顧客で2024年の売上の約53%を占めるなど長期取引先との関係を強みとしています。チューブ製品ではBRISMETが最大48フィート長のパイプ製造など大型・高付加価値品に対応し、ASTIは独自の仕上げ技術と高い技術支援で装飾用や特殊用途のニーズに応えています。同社はこれらの現場設備と顧客密着型サービスを通じて価格競争だけに頼らないポジショニングを目指しています。
事業拡大では、非中核資産の整理と成長資源の再配分を進めています。2023年12月にSpecialty Pipe & Tube関連資産を約5,500万ドルで売却した一方、Munhall施設の閉鎖で製造拠点の集約を進め、収益性と効率性の向上を図っています。今後は既存製品の深耕による有機成長に加え、機動的な買収機会も視野に入れており、無借金かつ約4,740万ドルの与信余力があることから戦略的なM&Aや設備投資の実行余地を確保しています。同社は市場拡大とともに出荷量と製品ミックスの改善で収益率の向上を目指しています。
技術革新と内部統制の強化にも重点を置いています。原材料調達の最適化や製品ライン管理により原材料コストを低減させたことが2024年の営業損益改善に寄与しており、今後も製品開発や製造プロセスの改善に投資する方針です。同時に財務報告のIT一般統制に関する重要な弱点を認識しており、外部アドバイザーを起用してユーザーアクセス管理や職務分離、サイバーセキュリティ対策の整備、IT方針の文書化、在庫・収益のレビュー強化といった具体的な改善策を実行中で、これらの是正を通じて信頼性の高い管理体制を構築することを同社は目指しています。