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AECOMACM
事業内容
AECOMは世界的な総合インフラ企業です。同社は道路・鉄道・空港・港湾、上下水やエネルギー、病院や学校などの施設分野において、設計・エンジニアリング、環境調査、都市計画、プロジェクトおよび施工管理、運用・保守といったライフサイクル全体のサービスを提供しています。最近はデジタル技術やデータ活用にも投資し、設計効率や提供ソリューションの高度化を進めています。
同社の主要顧客は政府機関や公共事業主体が中心で、米国の連邦・州・地方自治体に強みがありますが、民間の開発業者や産業企業、港湾運営者なども重要な顧客です。収益はコンサルフィーや設計・工事の出来高収入、長期の運用契約、共同事業体を通じたパススルー収入が混在しており、受注残が将来の売上見通しに直結する収益構造です。
同社は地域別に米州(Americas)と国際の二本柱で事業を展開し、業種別には輸送、施設、上下水・資源、政府・産業向けなどのセグメントを持っています。主要な製品ラインは設計・技術コンサルティング、プログラム/施工管理、運用・保守、そしてデジタルソリューションで、大型案件は共同事業体での受注が多いです。2024年9月時点の受注残は約374億ドルで、公共予算や季節要因により四半期ごとの売上に変動が出やすい点が投資家が注目すべき特徴です。
経営方針
同社(AECOM)は規模拡大と収益性の改善を成長戦略の中核に据えています。具体的には、受注残高(バックログ)が2024年9月末で約374億ドルにのぼり、米州が約310億ドル、国際事業が約64億ドルと地域別に偏りがあります。また、会計上の「残存履行義務(RUPO)」は約198億ドルで、バックログとの差(約176億ドル)は契約が未署名の受注や下請け経費等を含む点を示しています。資本政策では株式の自己買いを重視しており、取締役会は買戻し枠を最大10億ドルに引き上げ無期限化しており、直近四半期では約333万株を取得しています。同社は同時に負債の見直しも進めており、2024年4月に新たなシンジケート融資で1.5億ドルのリボ、7.5億ドルのタームA、7.0億ドルのタームBを設定するなど、財務基盤の再構築を図っています。
同社は交通インフラ、上下水や環境、建築・施設の設計と効率化、省エネ施設、プログラム・工事管理といった分野へ重点投資を行い、ワンストップでライフサイクル全体を支援できる点で差別化を図っています。安全と技術力を強みとし、労働災害ゼロを目指す安全管理や、高度な設計・技術チームの維持に注力しています。人材育成では「AECOM University」やグローバル技術アカデミーなどの学習基盤を整備し、現場技術とデジタル技術を結びつけることで他社が模倣しにくい提供力を作ろうとしています。
新市場開拓と事業ポートフォリオの最適化も明確な方針です。同社はM&Aによる成長と非中核事業の選別・売却を並行して進めることで資源配分を最適化しようとしています。大規模案件では現地企業とのジョイントベンチャーを活用しているほか、都市計画や大規模複合開発が進むインド、中国、東南アジア、中東等の市場に強化したアプローチを取っています。加えて、固定価格の施工リスクを削減する方向でセルフパフォーマンス型の高リスク工事のエクスポージャーを低減する施策を進めている点も特徴です。
技術革新ではデジタル化とデータ活用を成長の推進力に位置づけています。同社は設計データや運用データのライブラリ化で設計効率を高める投資を行い、プロジェクトの品質向上と短納期化を図っています。人材向けのデジタル学習に加え、サイバーセキュリティ体制の強化も進めており、CISO(最高情報セキュリティ責任者)を中心に外部専門家による定期的な評価、模擬攻撃や脆弱性診断を実施しています。同社はこれらの技術・データ投資を通じて複雑案件への対応力を高め、持続可能性や気候変動対応を含む付加価値サービスで差別化を図ろうとしています。