Intapp, Inc.INTA

時価総額
$33.6億
PER
会計・コンサル・投資銀行・法律分野向けAI業務ソリューションの世界最大手。関係性と案件を統合するクラウドプラットフォームを展開。2025年4月に不動産向けソフト企業を買収。北米・欧州・アジア太平洋中心に展開。

事業内容

Intapp, Inc.は、法律事務所や会計事務所、コンサルティング、投資銀行、プライベートキャピタルなど専門職向けに業務をつなぐクラウド型ソフトを開発・提供しています。主力の「Intapp Intelligent Cloud」は顧客情報や案件、リスク管理を一元化し、AIを活用した分析や自動化機能を組み込んでいるのが特徴です。

同社は世界で約2,700社以上の顧客を抱え、95のAm Law 100法律事務所や大手会計事務所、多数のプライベートキャピタル/投資銀行を顧客にしています。収益は主にサブスクリプション型の継続収入が中心で、導入時の設定やコンサルティング、運用支援といったプロフェッショナルサービスも重要な収益源になっており、主に直販で販売しています。

事業は業界別のソリューション群で構成され、法務向けの利益相反や顧客受入管理、案件・関係管理のDealCloud、最近のTermSheet買収に代表される不動産向けソリューションなどを展開しています。さらに導入支援や保守、マネージドサービスを行い、マイクロソフトをはじめとするパートナーエコシステムで機能連携と市場拡大を図っています。

経営方針

同社は中長期での顧客基盤拡大とアップマーケット進出を主要な成長戦略に据えています。具体的には、現在2,700社超の顧客基盤(62カ国以上で導入)をさらに拡大するとともに、大企業やエンタープライズ領域への展開を強化し、既存顧客への「導入→拡張(land-and-expand)」で継続的な売上拡大を目指しています。約7億1,970万ドルの残存契約(うち約54%が次の12か月で収益化見込み)を抱える点は見通しの安定要因であり、営業・マーケティングへの投資や販売体制の強化によって新規顧客獲得とアップセルを図っています。一方で、将来の利益は社内留保する方針で、当面配当支払いは想定していません。

重点投資分野は、業界特化型のクラウドプラットフォームと人工知能の実用化です。Intapp Intelligent Cloudを中心に、企業向けに安全で拡張性のあるクラウド基盤を提供しつつ、人工知能(AI)を組み込んだ「Applied AI」戦略やIntapp Assistといった次世代機能に資源を集中しています。差別化要因としては、会計、法律、投資銀行、プライベートキャピタル、リアルアセットなどの特定業界に深く根ざした業務知見を製品に組み込み、業務データとプロセスをつなげることで他社の汎用ソリューションと一線を画しています。研究開発拠点や外部の開発者を含めた体制(従業員は約1,336名)への継続投資により、機能拡充と品質維持を進めています。

新市場や事業領域の拡大は、多角的に進められています。地理的には国際展開を優先投資先として分析・拡大を図り、業界的にはコーポレート法務やコーポレート開発など近接分野への展開を進めています。また、M&Aや戦略的投資も成長の手段として位置付けており、過去13年で12件の買収を行ってきた実績があります。直近では2025年4月に不動産チーム向けソフトのTermSheetを買収し、取得無形資産(顧客関係3.2百万ドル、開発技術9.0百万ドル)や最大1,500万ドルの業績連動支払を通じて不動産分野でのプレゼンスを高めています。ただし、買収時の統合リスクやコストを管理することが重要課題である点も同社は認識しています。

技術革新への取り組みは、製品ロードマップの核心です。同社は人工知能とデータサイエンスの能力強化に継続投資し、人・プロセス・データをより速く結び付ける機能開発を進めています。具体的にはAIを用いた関係性分析や市場トレンド把握、意思決定支援といった機能を製品群に統合し、クラウド環境での継続的アップデートとエンタープライズ級のセキュリティを提供することで、顧客のIT複雑性を低減して導入ハードルを下げる施策を取っています。パートナーエコシステム(約145の技術・データ・実装パートナーやMicrosoftとの協業)を通じた共同販売・共同開発も技術革新の加速手段として活用しています。