FISERV INCFI

時価総額
$673.8億
PER
金融テクノロジーと決済処理の米国最大手。クラウド型デジタルバンキング「XD」や決済処理、Clover POSなどを展開。2022年のMerchant One買収、23年7月の事業売却(2.35億ドル)、24年にCCV・Payfare買収を発表。米国・カナダ中心にグローバル展開。

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企業概況
112文字)
業績概況
テーマ
1項目)
ブランド
1項目)
ライバル企業
1社)
同業種の日本企業
2社)

事業内容

FISERV INCは、金融機関や小売業者、公共機関向けに決済処理や口座管理、デジタルバンキングといった金融テクノロジーと関連サービスを提供する企業です。同社はカードや銀行取引の処理、口座処理システム、店舗向け端末や業務用ソフトを主力として、取引の遂行と資金管理を支えています。

同社の主要顧客は銀行や信用組合などの金融機関、オンラインや実店舗の事業者(中小企業から大手まで)、および州などの公共支払いを扱う機関です。2024年の総収入は約205億ドルで、うち81%は口座や取引に対する手数料を中心とした継続的な処理・サービス収入で構成され、長期契約と高い更新率が収益の安定に寄与しています。

同社は事業をMerchant SolutionsとFinancial Solutionsの二つのセグメントで展開しています。Merchantでは加盟店向けの決済取得やオンライン決済、店舗端末と事業管理ツール(例:Clover)を提供し、Financialでは銀行向けの口座処理プラットフォーム(例:DNA、Finxact)やデジタルバンキング基盤(Experience Digital)といったシステムを提供しています。加えて、詐欺対策やデータ分析、コンサルティング、チェック処理や組み込み型の金融サービスなど周辺領域も収益の柱になっています。

経営方針

同社は長期的な成長と収益性向上を両輪に据えた戦略を掲げています。直近の業績では2024年の総収入が約$20.5 billion($20,456百万)、営業利益は約$5.9 billionを計上しており、取引やアカウントに基づく「処理・サービス収入」が総収入の約81%を占める点を重視しています。顧客関係の拡大、製品・サービスの統合や新製品投入、そして業務効率化を通じて顧客あたりの価値を高めることを目指しており、資本配分は内部投資、債務返済、自社株買い(取締役会は60百万株・75百万株の買い戻し承認を行っています)などを組み合わせて実行しています。同社は現在も配当は行っておらず、株主還元は主に自社株買いで行う方針です。

同社は重点的に投資する分野を明確にして差別化を図っています。小口向けの販売管理プラットフォームやPOS端末、企業向けのオムニチャネル決済基盤、そして金融機関向けの口座処理やデジタルバンキング(Experience Digitalなど)に資源を集中しており、これらを統合して顧客に一気通貫のサービスを提供する点が競争優位です。また、人工知能(AI)を顧客サービスの品質向上、プラットフォーム分析、詐欺検知に活用するなど、データと技術を使った差別化に注力しています。高い更新率を誇る長期契約型の収入構造と規模の経済が同社の持ち味です。

同社は買収とポートフォリオ管理を成長の重要な手段と位置づけています。買収は「顧客ニーズに合う製品・技術」「業界構造を変え得る機会」「事業規模を獲得できる案件」を基準に行い、最近ではMerchant One(買収額約$302M)、売却では財務リコンシリエーション事業を$235Mで処分しており、さらにCCVとPayfareの買収(合計約$360M、2025年Q1閉鎖予定)で決済端末や即時給与・組み込み型金融の領域拡大を狙っています。地域展開については米国・カナダで収入の約85%を占める一方、国際売上は15%であり、ISVや代理店、金融機関との提携を通じて海外や埋め込み型金融市場への拡大を進めています。

技術革新とリスク管理にも力を入れています。製品開発はサービス指向の設計を取り入れ、クラウド対応のプラットフォームやAPIによる統合で新機能の迅速な提供を目指しており、契約獲得や顧客導入のために資本化した契約関連費用(販売手数料約$483M、導入費用約$513Mを計上)からも積極投資がうかがえます。同社はサイバーセキュリティを企業リスク管理の主要項目と位置づけ、取締役会傘下のリスク委員会が監督する体制を整備しています。一方でバランスシート上ののれん・無形資産が資産の約60%を占め、負債は約$25 billionと高水準であるため、買収の実行と統合、資産の減損管理や資本構成の慎重な運営が今後の重要課題です。