Wix.com Ltd.WIX

時価総額
PER
プロフェッショナル向けデジタルプレゼンス構築の最大手。ウェブサイト作成プラットフォーム、eコマース、決済、メールマーケ等を展開。2013年11月のIPOや2024年に約4.66億米ドルの自社株買いを実施。米国・欧州・イスラエルを中心に世界展開。

事業内容

Wix.com Ltd.は、誰でも手軽にプロフェッショナルなウェブサイトやオンライン店舗を作成・運営できるクラウド型プラットフォームを提供しています。直感的な編集ツールと豊富なテンプレートを軸に、機能を拡張する外部アプリやデザイン機能も備えています。

同社の主要な顧客は個人事業主や中小企業が中心で、デザイナーやパートナー企業、近年は中堅・大手企業にも利用が広がっています。収益は無料利用者の中から有料化する有料サブスクリプションが柱で、決済・広告・メール配信などの事業向け有料サービスや取引手数料も大きな収入源です。

事業は大きく分けてサイト作成サービス、本格的な開発者向けツール(VeloやWix Studio)、そしてオンライン販売や予約、決済などを含む事業向けサービスで構成しています。さらに第三者製アプリの流通を支えるアプリ市場や、DeviantArtなどの傘下サービスを通じて利用者のビジネス拡大を支援するエコシステムを拡大しています。

経営方針

同社は登録ユーザーの拡大とプレミアム会員の維持・増加、そして会員一人当たりの収益(ARPU)向上を通じて持続的成長を目指しています。具体的にはプレミアム会員数は2024年12月時点で約618万件で、前年の626万件から価格改定の影響でわずかに減少しましたが、同社は登録者獲得と有料化率の改善で収益基盤を強化する計画です。財務面では現金・現金同等物が約6.61億ドル、短中期投資が約3.45億ドルと潤沢で、繰延収益(約6.61億ドル)を安定した収入源として活用しつつ、株式買戻し(2024年に約4.66億ドル、2025年1月に2.00億ドル実施)などで資本配分も進めています。

同社は研究開発と「ビジネスソリューション」への投資を重点領域としています。2024年に研究開発費は売上の約28.1%を占め、決済サービス、広告運用、メール配信、発送・POS・ロゴ作成等の付帯サービスを強化して一つのプラットフォーム上で収益化することで差別化を図っています。加えて設計専門家や開発者向けの上級ツールを提供し、汎用のテンプレート型サービスと比べて「デザイン性」「拡張性」「業務連携」を売りにしている点が特徴です。知的財産の蓄積にも注力しており、発行済み特許は300件超、出願中も多数あることで技術的な優位性の形成を目指しています。

同社は新たな顧客層と市場の開拓にも取り組んでいます。これまでは個人や小中規模事業者に強みがありましたが、今後はパートナー企業や中堅・大企業向けの後方業務(バックオフィス)機能の充実や、代理店・リセラー経由の導入促進を進めることで市場拡大を図る方針です。実行施策としては営業・アカウント管理体制の強化、パートナー向けの収益分配モデル、製品連携のスムーズな移行支援を掲げています。一方で大口顧客への展開は販売サイクルが長く移行コストもかかるため、同社は段階的な導入と顧客ごとのカスタマイズ対応でリスクを軽減しようとしています。

同社は技術革新の継続を重要な経営課題と位置づけています。特に生成型AIや機械学習の組み込みによるサイト作成の自動化・高速化、開発者向けの拡張機能、そしてプラットフォーム全体のセキュリティとデータ保護インフラ整備に投資しています。2025年の設備投資は約1,300万〜1,500万ドルを見込むなど基盤強化も予定しており、優秀な研究開発人材の採用と保持を通じて新機能の投入スピードを高め、競合のAI導入や既存サービスとの機能重複に対抗する方針です。