TRUPANION, INC.TRUP

時価総額
$15.7億
PER
猫と犬の医療保険の大手。特許の直接支払ソフトと25年以上のペット健康データベースを活用したデータ駆動型保険商品を展開。2014年の上場と2016年のNASDAQ移行の実績。米国・カナダ・欧州・豪州で展開。

事業内容

Trupanion, Inc.は主に犬と猫向けの医療保険を米国、カナダ、欧州大陸およびオーストラリアで提供しています。データを活用した垂直統合型のサブスクリプションモデルで、個々のペットに応じた料金設計を行い、獣医への直接支払いを可能にする独自のソフトで迅速な請求対応をしています。

主要顧客はペットを飼う個人で、保険料(サブスクリプション支払い)が同社の主要な収益源となり、会員基盤から安定した継続収入を得ています。加えて他社向けに保険商品を提供するB2B事業や提携ブランドからの収入もあり、これらはサブスクリプション事業に比べて低めの利幅となることが多いです。

事業はサブスクリプション事業とその他事業の二つの報告セグメントに分かれており、サブスクリプション内では直販のTrupanionブランドに加え、FurkinやPHI Direct、欧州向けのブランドなど複数の製品ラインを展開しています。保険リスクは同社が直接引き受けるか再保険で対応し、獣医コミュニティと連携する独立のTerritory Partnerや長年蓄積したペットデータ、特許ソフトを活用して会員獲得と請求処理の効率化を図っています。

経営方針

同社は会員数の拡大と収益性の回復を両輪に据えた成長を目指しています。具体的には、定額制保険の継続的な増収を通じて「獣医一件当たりの生涯価値」を高め、会員獲得のための投資(ペット獲得費用)を内部で設定した目標利回りで回収することを重視しています。直近では2024年の純損失が約960万ドル、累積赤字が約2億2,590万ドルとなっており、同社はこれらの数字を改善するために価格改定やコスト管理でターゲットとなる損益率(ペイアウト比率や営業マージン)を達成することを目指しています。価格修正は規制当局の承認を経ており、実施後は翌12か月程度で保有契約へ順次反映される仕組みです。

重点投資分野として、同社は獣医との直接接点の強化と社内システムの整備に資源を投じています。具体的には、地域ごとの独立営業担当(Territory Partners)を通じて獣医に対する教育と紹介チャネルを深耕し、特許取得の直接支払ソフトを広げることで診療時点での請求支払いを可能にしています。また、25年以上にわたる自社の診療データベースを使った精緻な個体別価格設定やリスク評価に投資することで、垂直統合型の運営によるコスト削減と付加価値提供で差別化を図っています。

新市場開拓と事業拡大では、米国・カナダに加えて欧州大陸やオーストラリアでの展開を進めています。現地で提供中の一部商品については当初は第三者引受で運用してきましたが、今後は直接引受または再保険を通じて完全に保険リスクを引き受ける方針を打ち出しており、これによって収益性の向上と商品設計の柔軟性を確保しようとしています。さらに「Powered by Trupanion」などの他社チャネルや低中価格帯ブランド(Furkin、PHI Direct)を通じた販売を拡大し、フードや周辺サービスといった隣接領域への投資も試行しているため、製品ミックスの多様化で新たな収益源を作ることを目指しています。

技術革新への取り組みとしては、バックエンドの保険処理ソフトや請求処理の自動化に重点を置いています。サイバーセキュリティは経営リスク管理の中核に据え、国の基準や国際規格(NISTやISOに基づく枠組み)に沿った体制を整備し、外部の専門責任者(vCISO)や情報セキュリティ委員会が運用と監視を行っています。さらにデータとソフトを活用して保険料の精緻化や会員体験の向上を図る一方で、買収や技術統合には時間とコストがかかるとの認識もあり、投資の実行と統合を慎重に進める方針です。