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- Territorial Bancorp Inc.
Territorial Bancorp Inc.TBNK
事業内容
Territorial Bancorp Inc.は銀行持株会社で、主に地元密着の銀行業務を展開しています。子会社の銀行を通じて、預金口座の受け入れや住宅ローンを中心とした融資、投資証券の運用や支店・電子チャネルを通じた各種金融サービスを提供しています。
同社の主要な顧客は個人の住宅ローン借入者や地域の預金者、法人や自治体などで、収益は主に貸出による利息収入と貸出・預金に関する手数料で構成されています。預金残高の増減や利率の設定が収益に直接影響し、証券利息やその他手数料収入も補助的な収入源になっています。
事業は報告可能なセグメントを銀行業務一つに集約しており、貸出の内訳では一〜四戸の住宅ローンが総貸出の大半(約97%)を占めています。加えて、住宅ローン以外の消費者ローンや商業不動産ローン、預金商品、ローンの組成・販売や銀行保有の生命保険といった商品ラインで収益を補っている点が特徴です。
経営方針
同社は地域密着型のバンキング事業を軸に、収益性と資産規模の両面での安定成長を目指しています。2024年の業績目標設定を見ると、年間インセンティブ計画では純利益のターゲットを約6,554千ドル、閾値を約5,243千ドル、最大目標を約7,865千ドルに設定するなど、明確な数値目標を掲げています(評価指標には純利益の他、総資産に対する利益率や不良資産比率、効率性も含む)。一方で2024年は純損失(-4,299千ドル)となり、目標達成度に応じた報酬支払は抑制される仕組みを維持しており、目標達成とリスク管理を両立させる方針です。自己資本や規制資本比率は「十分な資本水準(well‑capitalized)」を維持しており、安定した基盤のもとで成長を図っています。
重点投資分野は住宅ローン中心の貸出と資金調達力の強化にあります。貸出ポートフォリオの約96.9%、約12億ドルが1〜4戸の住宅向けローンで構成されており、住宅ローンの起源が主たる収益源です(2024年の新規貸出原資は約7,490万ドル、前年は約1.008億ドル)。また預金増強にも注力しており、2024年は預金が純増で約8,110万ドルとなり、その内訳では州・地方公共団体の預金が約9,150万ドル増加した点が特徴です。差別化戦略としてはハワイ全域にわたる地域網と地方公共団体との関係、徹底した与信管理(不良資産比率を評価指標に組み入れる)を通じて高い信用品質を維持する点を強みとしています。
新市場開拓や事業拡大については、現状は主にハワイ市場でのシェア拡大と商品深掘りを優先しています。州内では預金市場で上位に位置しており(州全体で第5位、預金シェア約2.9%)、外部への大規模な地理的拡張よりも、地方公共団体や住宅市場など既存顧客層の取り込みを通じた拡大を志向しています。資金調達面では、2024年に連邦住宅ロー資金機構(FHLB)借入残高を約82.0百万ドル減らして1.60億ドルとし、連邦準備銀行借入(FRB)を全額返済するなど、外部借入依存度を低減して余剰資金を確保する動きも見られます。住宅ローンの一部は証券化や販売も行っており、流動性と貸出残高のバランスを取りながら事業を拡大しています。
技術革新とリスク管理では、サイバーセキュリティやシステム整備に注力していることが10‑Kの項目構成からもうかがえます(サイバーリスク管理・戦略・ガバナンスに関する開示あり)。競合するフィンテックや大手行と伍して預金を集めるため、オンライン口座サービスや振替・決済処理など顧客向けチャネルの運用強化が重要課題で、同社はこれらのデジタル基盤と併せて与信評価や保有債権の評価で割引現在価値やモンテカルロ法といった分析手法を用いるなど、データ・モデルを用いた運営改善にも取り組んでいます。これらは顧客利便性の向上と同時に、不正や業務停止リスクの低減につながる投資と位置づけられています。