SmartRent, Inc.SMRT

時価総額
$3.9億
PER
不動産向けスマートホーム/ビル管理ソリューションの最大手。クラウド型SaaSとハブやスマートロック等のデバイス、導入・運用支援を展開。2022年3月にSaaS同業を約13.5万ドルで買収、従業員数494人(2024年12月時点)。米国中心に展開。

事業内容

SmartRent, Inc.は不動産オーナーや管理会社、入居者向けにクラウド型の物件管理プラットフォームと連携するスマート機器を組み合わせたソリューションを提供しています。中央の接続装置を使って各種機器や外部サービスを一元管理でき、運営コストの低減や入居者の利便性向上を図っています。

同社の主要顧客は機関投資家が保有する集合住宅や大手の一戸建て賃貸事業者、住宅メーカーや不動産の買い手企業などで、収益は主に月額のクラウド利用料に加え、機器販売や導入・設置などの専門サービスで構成されています。こうした組み合わせにより、定期的な収入と導入時の売上を両立させています。

事業面では、物件運営を支援するソフトや点検・保守の管理機能、入居者向けの契約や支払、共用設備の予約といった入居者体験を改善する機能を一つのプラットフォームで提供しています。加えて、鍵や温度管理、各種監視機器などの接続機器を統合し、導入から運用、サポートまでを一貫して担うことでユーザーの運用負担を下げることに注力しています。

経営方針

同社は「持続的な年次経常収益(ARR)成長」を中核に置いた成長戦略を掲げています。2024年の売上高は約1億7,488万ドルで、そのうちSaaSが約5,164万ドルを占め、ハードウェア売上が約8,284万ドルでした。同社はSaaS比率の向上と解約率の抑制により収益のストック化を進め、粗利率の改善と最終的な黒字化を目指しています。資本戦略としては、2024年に取締役会が最大5,000万ドルの自社株買い枠を承認しており、投資家還元と資本効率の向上も図っています。

重点投資分野はソフトウェア機能の強化とハード+サービスの統合です。具体的にはリーシング業務をオンライン化するソリューションや入居者向け決済・アメニティ管理などの居住者体験機能、ハブレス機器やスマート家電、映像・防犯システムといったホームIoT、建物レベルではエネルギー・水・空気の計測といった分野に投資を集中させています。差別化の源泉としては、同社独自のクラウドプラットフォームと中立的な「オープンアーキテクチャ」、自社による導入・保守サービス、そして2022年に約1.35億ドルで買収したSightPlanにより補強された物件運営機能を挙げており、単なる機器供給ではないエンドツーエンドの運用価値を打ち出しています。

新市場開拓や事業拡大の計画としては、既存顧客への追加販売(アップセル)と導入先ポートフォリオの拡大を優先しています。対象は従来の集合住宅管理会社に加え、単身戸建て賃貸や住宅建設業者、iBuyerなどであり、同社のカバレッジは米国の機関保有の集合・単身賃貸市場の約15%に相当するとしています。国際展開についても機会を模索しており、買収やパートナーシップを通じた機能追加で顧客基盤を広げる方針です。

技術革新への取り組みは製品ロードマップに明確に位置付けられており、予防保全を可能にするセンサー連動の自動ワークオーダーや予測分析、ESG(環境・社会・ガバナンス)報告を支援するエネルギー分析ダッシュボードなどを開発しています。サイバーセキュリティ対応ではインシデント対応チームを運用し、製品の安全性と稼働率を重視しています。また税制改正により研究開発費の会計処理が変わった点を踏まえつつも、同社は研究開発投資を継続しており、サプライチェーン面では複数調達や一定の在庫確保で供給リスクを低減する施策を講じています。