POWER INTEGRATIONS INCPOWI

時価総額
$20.3億
PER
高電圧パワー変換向けアナログ・ミックスドシグナルICの大手。InnoSwitchやBridgeSwitch、PowiGaN採用の高効率電源ICを展開。2024年7月に垂直型GaN技術の資産を952万ドルで買収。米国拠点で世界展開、2024年6月時点の時価総額は約30億ドル。

事業内容

Power Integrations Inc.は高電圧の電力変換向けにアナログと混成信号の集積回路(IC)や関連部品を設計・開発・販売しています。

同社の製品は家庭用充電器や家電、通信機器などで高電圧の交流を低電圧の直流に変換したり、出力を安定させたりする用途で使われています。

同社は主にOEMや電子部品のディストリビュータに製品を販売しており、売上は一部の顧客に集中しています。

上位10社(ディストリビュータを含む)が2024年の売上の約79%を占め、流通経路経由の販売が約70%を占めるため、販売の見通し管理が難しい構造です。

事業の主な柱は、AC-DC向けの電源用IC、高電圧のゲートドライバ、ブラシレス直流モータ向けのモータドライバなどです。

加えて、窒化ガリウム(GaN)技術の導入や設計支援ソフト・オンライン技術サポートを強化し、電気自動車や高効率家電など新たな市場への展開を進めています。

経営方針

同社は成長戦略の柱として「アドレス可能市場(SAM)の拡大」と「既存市場での浸透率向上」を掲げています。過去に出力レンジや用途を広げることでSAMを約15億ドルから約40億ドルへ拡大してきており、現在はAC–DC電源で最大約500ワット、ゲートドライバでは100キロワットからギガワット級、モータードライバ(BridgeSwitch系)は約746ワット(1馬力)相当まで対応できる製品群で市場機会を広げています。資本配分でも株式買い戻しを継続しており、2024年10月に追加で5,000万ドルの買い戻し枠を承認、2024年は約0.4百万株、2,790万ドルを取得するなど株主還元と成長投資の両立を図っています。

同社が重点的に投資する分野は研究開発と高効率化を支えるパワー半導体技術で、特にガリウムナイトライド(GaN)トランジスタの独自技術を強みとしています。GaN技術を用いることでエネルギー効率が高まり、競合製品よりも小型・高効率化した電源設計を提供できる点で差別化しています。設計支援やツール提供(設計ソフトやオンライン技術サポート、トランスフォーマ試作サービス等)にも注力し、顧客の製品採用を早める具体的施策を展開しています。

新市場の開拓では自動車向け、特に電気自動車(EV)のパワー回路や充電関連を中長期の重点領域と位置付け、車載適合品の投入や自動車用途への設計支援を進めています。また家電やスマートメーター、USBコンセントなど新しい用途への設計採用を通じて顧客基盤を拡大する計画です。販売は直販に加え流通チャネル経由が約70%を占め、2024年は上位10顧客で約79%の売上を占める構造であるため、チャネル管理と顧客多様化が成長を左右する重要課題であることを同社は認識しています。

技術革新への取り組みとしては、自社GaN(PowiGaN)を含む高電圧トランジスタの世代開発と、2024年に完了したOdyssey社の買収(買収対価952万ドル、未完成R&Dを4,930千ドル計上)による高電力GaN技術の強化を具体的に進めています。研究開発費は発生時に損金算入する方針で、買収で取得した未完成技術は完成まで無期限資産として扱い、完成後に償却を開始するなど会計上の管理も明確にしています。製造設備への投資も継続しており、2024年の有形設備投資は1,730万ドル、2025年も生産能力を支える機械設備投資を現金で賄う計画です。