北里コーポレーションJP:368A

時価総額
¥613.2億
PER
17.5倍
生殖医療向け医療機器・試薬の製造・販売の有力企業。CryotopやETカテーテル、卵子・胚凍結用試薬などを展開。2025年4月30日時点で世界約110ヵ国・地域に供給、約80社の代理店ネットワークを有する。

事業内容

北里コーポレーションは人工授精や体外受精、卵子・胚の凍結保存などの生殖医療向けに、医療機器や試薬を開発・製造する企業です。同社は再生医療に関する生殖工学技術にも注力し、国内外の医師や研究者と共同研究を行いながら製品改良や新製品の創出に取り組んでいます。製品は日本だけでなく欧州、米国、中国、インドなど世界各地に供給しています。

同社の主要顧客は病院やクリニックなどの医療機関で、国内では医療機関向けの消耗品や器具販売が収益の柱になっています。海外販売は約80社の代理店ネットワークを通じて約110か国・地域に供給することで収益を拡大しています。加えて、遺伝子検査や高齢者向け機器販売、米国での輸入・販売を担う子会社などが事業に寄与しています。

同社は事業を単一の医療機器セグメントとして扱い、製品は大きく「試薬」「凍結保存製品」「医療機器」「顕微授精用器具」に分かれます。試薬は培養や凍結・融解に使う製品、凍結保存製品はCryotopなどの保存容器、医療機器は採卵針や移植用カテーテル、顕微授精用は注入用や保持用のピペット類などです。すべて国内で製造し、手作業による細かな仕様対応力を強みとして顧客ニーズに応えています。

経営方針

北里コーポレーションは、不妊治療ニーズの高まりを受けて国内外での安定的な成長を目指しています。経営上の重要指標として売上総利益の金額向上を掲げ、既存領域のシェア維持・拡大と海外展開を両輪に成長を図る方針です。海外販売は約80社の代理店ネットワークを通じ、約110か国・地域へ供給しており、米国子会社を2023年6月に設立したほか、欧州での拠点設立も検討しています。生み出したキャッシュ・フローは人的投資、株主還元、M&Aに配分し、持続的な企業価値向上を図る予定です。

同社は重点投資分野として生産能力の増強と研究開発、そして営業・マーケティング体制の強化を挙げています。具体的には人員増強を進め(2024年3月期に人員を増員)、新社屋の建設に2025年3月期に着手し、2026年3月期から生産エリアを拡大する計画です。製造コスト削減に向けて自動化設備への投資も検討しており、品質面では「不適合品率」を管理指標に据えて不具合予防と抜き取り検査を強化し、クレームゼロを目指しています。国内での手作業によるきめ細かい仕様対応力を差別化要因とし、医療現場の使い勝手改善に素早く応える姿勢を維持しています。

新市場開拓と事業領域拡大については、当面は既存領域の深耕に注力しつつ、中長期で周辺領域へ横・垂直展開を進めます。垂直的には資材や樹脂メーカーの補完を視野に入れ、水平的には臨床検査や細胞保管サービスの拡充、ジェネリック医薬品領域や体外診断薬への進出、研究を通じた新製品開発を計画しています。営業面ではウェブマーケティングやオンラインセミナー、EC販売を活用して顧客接点を広げ、海外では各国の医療機器規制に対応する情報収集と製品登録を進めることで、市場リスクを抑えながら受注基盤を拡大しています。

技術革新への取り組みは研究連携の強化と生産現場の高度化で具体化しています。同社は再生医療や生殖工学分野で国内外の医師や研究者と共同研究を行い、製品改良や新製品の創出を目指しています。また製造面では自動化や設備更新による工程の効率化を進める一方、品質保証部と製造部が連携して予防的な品質管理体制を強化します。加えて環境負荷低減のため静岡本社工場に太陽光パネルを導入するなど、持続可能性と技術投資を両立させることで長期的な競争力を高めようとしています。