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キオクシアホールディングスJP:285A
事業内容
キオクシアホールディングスは、フラッシュメモリを中心とした半導体メモリの開発・製造・販売を行う企業です。主力製品は不揮発性のメモリチップと、それを組み込んだSSDやメモリカード・USBメモリといったストレージ製品で、データ保存の基幹部品を提供しています。
同社の主要な顧客はスマートフォンやパソコンのメーカー、車載や産業機器のメーカー、さらにクラウド事業者やデータセンター運営者など幅広く、製品販売が収益の大半を占めています。加えてSandiskグループとの製造合弁を通じて一部生産能力を共有しており、合弁向け出荷も重要な収入源になっています。
事業は報告上「メモリ事業」単一ですが、売上は用途別に「SSD&ストレージ」(PC・エンタープライズ・データセンター向け)、「スマートデバイス」(スマートフォン・タブレット・車載などの組み込みメモリ)、「その他」(SDカードやUSBメモリ、合弁経由のSandisk向け売上)に区分しています。四日市や北上の工場で自社チップを量産しつつ、大容量化や信頼性向上に向けた技術開発と生産能力の強化を進めています。
経営方針
キオクシアホールディングスは、データ量の爆発的増加とAI普及を追い風に、フラッシュメモリ市場での成長を中核戦略としています。同社はデータセンターやエンタープライズ向け大容量ストレージ分野でのシェア拡大を目指しており、Sandiskグループとの製造合弁を含めたビット生産量で世界最大級の約29%のシェアを持つ強みを活用して出荷量成長率の維持を図っています。財務面では、長期的に高いNon‑GAAP営業利益率の実現を目標とし、ネット有利子負債(約9,310億円)を引き下げて将来的にネット・キャッシュ化することをめざしています。
同社は成長のために重点投資分野を絞り、差別化を図る方針です。具体的には、データセンター向けの大容量・高性能SSD、スマートデバイス向けの大容量チップ、そしてクライアント向けの4ビット/セル(QLC)製品の開発と量産を進めています。技術面では第8世代BiCS FLASH™の早期立ち上げやCBAやOPSといった工程革新、218層に及ぶ積層化などでギガバイト当たりコストの引き下げに取り組んでおり、PCIe 5.0対応の高速SSDを2023年にサンプル出荷、同年12月に認証を取得するなど最新規格への対応も進めています。
新市場開拓と事業拡大では、生成AIの学習・推論用途を中心にデータセンター需要を取り込む戦略をとっています。同社は大手クラウド事業者やエンタープライズ顧客との関係強化を通じて販売拡大を狙い、四日市・北上の生産能力強化や北上工場の適時拡張を計画しています。さらに、後工程拠点の多拠点化や現地法人リソースの強化、顧客管理の効率化(CRMの充実)でグローバル販売基盤を拡大し、地政学リスクや顧客在庫変動に耐えうる供給体制の構築を進めています(生産関連計画は経済産業省の認定も取得済み)。
技術革新への取り組みとして、研究開発の集約と先端研究の強化を図っています。同社は横浜の新研究・技術開発施設(2023年稼働)や先端技術研究所(2024年設置)で次世代メモリやAI応用、材料・システム技術の基礎から応用までを推進し、研究開発費は直近2年度の売上比で平均約10.4%を計上しています。生産面では製造工程にAIを導入して稼働率や歩留まりを改善し、ギガバイト当たりのコスト削減を狙うとともに、2050年ネットゼロ、2040年に再生可能エネルギー由来電力比率100%といった環境目標の達成にも取り組んでおり、サプライチェーンの複線化や部品の共通化で強靭化を進めています。