ソラコムJP:147A

時価総額
¥445.6億
PER
IoTプラットフォーム事業の有力企業。独自クラウド型モバイル・コア、IoT SIMやデータ可視化を含むプラットフォームを展開。主要株主のKDDIが出資、2023年に松尾研究所とIoT x GenAI Labを設立。2024年3月時点で180の国と地域で展開。

事業内容

ソラコムは、企業が手軽にIoTを導入できるクラウド型プラットフォーム「SORACOM」を中核に事業を展開しています。同社はIoT向けの通信(IoT向けSIMや低消費電力通信、衛星通信など)、データの蓄積・可視化、クラウド連携や遠隔アクセスといった機能をワンストップで提供しています。

同社の顧客はスタートアップから大企業、米国や欧州の事業者まで幅広く、少量から利用開始できる点が受け入れられています。収益は月次の利用料を軸とするリカーリング収益が主力で、デバイス販売や導入支援などの単発収益がこれを補完する構造です。

同社は事業を単一のIoTプラットフォームセグメントで運営し、収益構成は通信(コネクティビティ)、ネットワークサービス、アプリケーションサービス、商品販売、プロフェッショナルサービスや業務受託に分かれます。クラウド上に独自のモバイル基盤を持ち、複数キャリアでのグローバル接続やパートナープログラムでエコシステムを広げることで拡張性と顧客の継続利用を狙っています。

経営方針

同社は「SORACOM」を中核に、IoT導入のハードルを下げることでグローバルでの事業拡大を目指しています。ミッションは「テクノロジーの民主化」であり、プロダクトポートフォリオの拡充を通じてMVNOとして世界一のIoTプラットフォームを目指す方針です。経営指標としてはリカーリング収益の拡大を最重要視しており、既存顧客の継続率を表すNRRは第12期で117%、課金アカウントは2025年3月末で8,800件超、主要顧客の年間解約率は0.4%にとどまるなど、継続課金モデルの成長を具体的数値で示しています。

同社は重点投資分野として営業・マーケティング、人材採用・育成、研究開発、通信ネットワークの調達を挙げています。具体的には米国・欧州拠点での営業人員拡充やセルフサービスから大口顧客への転換を促すアカウントマネージャー体制、イベントやデジタル広告による認知向上、プロフェッショナルサービスの提供を強化することでARPA(1アカウント当たり売上)の向上を図っています。またKDDIやスズキ、丸紅グループとの戦略的アライアンスや、2024年10月のキャリオット連結子会社化など、パートナー連携とM&Aによる差別化も進めています。

同社は新市場開拓と事業拡大にあたり水平展開と垂直展開を両輪で進める計画です。水平的にはコネクティビティ、クラウド連携、アプリケーションなど幅広い用途での導入を進め、米国では中堅・中小のセルフサービス獲得、欧州では大口顧客への直接アプローチに注力します。垂直的にはコネクテッドカーやスマートシティなど業界特化のソリューション開発を進め、大規模案件の安定獲得を狙います。なおグローバル展開のために海外拠点の人員は増加傾向にあり、米欧の従業員数は2020年の16名から2025年には55名へと拡大しています。

同社は技術革新への投資を継続し、5G/6Gや衛星通信、生成AIといった進化をプラットフォームに取り込む方針です。具体的施策としてセルラー対応のAIカメラやIoTセンサーなど自社デバイスの開発強化、他社アプリ連携を容易にする仕組み作り、海外複数キャリアからの回線調達拡充によるネットワーク増強を挙げています。財務面ではリース債務等の有利子負債が950,167千円、現金・預金は8,917,773千円と流動性を確保しており、投資効果を見極めつつ採用・開発・マーケティング投資を進める姿勢を示しています。