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Farmland Partners Inc.FPI
事業内容
Farmland Partners Inc.は、米国の農地を取得して保有・管理する不動産投資信託(REIT)です。同社は農地を長期にわたり賃貸し、賃料収入と土地の価値上昇によるリターンを図っています。
主要な顧客は個人農家や農業事業者で、賃貸契約にもとづく定期的な賃料が収益の中心です。同社はまた、ポートフォリオの一部を売却して売却益を得ることがあり、これらの収入を原資に株主へ配当を行っています。
事業は単一の営業セグメントとして運営され、米国内の主要な農業地域にまたがる農地を保有しています。同社は土地の取得・賃貸管理のほか、灌漑や穀物保管などの改良投資や選別的な資産売買を通じてポートフォリオの価値向上を図っています。
経営方針
同社は長期的に調整後運用資金(AFFO)の安定拡大と株主還元の両立を目指しています。具体的にはポートフォリオの入れ替えによる資本効率の向上を進めており、2024年は物件売却による現金収入を優先して合計約3.12億ドルの譲渡を実行、これにより5,410万ドルの売却益を計上しました。一方で選別した買収も継続しており、2024年の取得は約1,790万ドルに留めるなどキャッシュの再配分を重視しています。株主還元面では2024年に1株当たり合計1.40ドル(うち特別配当1.15ドル)を分配し、株式自社買いは224万株を平均12.25ドルで実施、株式買戻し枠は年末時点で約5,580万ドルの余力があり、これらを通じて配当とバイバックの両面で株主価値の向上を図っています。なお、同社はREITとして課税要件を満たすため年間課税所得の90%以上の分配を基本方針としています。
同社は地域・生産特性に基づく選別投資を重点に据えています。コーンベルト、デルタ、ハイプレインズ、サウスイーストなど複数地域にまたがる農地を保有・運営し、土壌の質や水資源の可用性、灌漑や永久作物といった資産特性を重視して取得判断を行っています。取得時には「空地としての評価」や灌漑設備、穀物施設の再取得原価などを踏まえた価格配分を行い、賃貸条件やテナント関係の価値も明確に識別・償却しています。加えて、保有する事業持分の約97.5%を自社が保有するなど構造面でのアラインメントを取る一方、外部委託を含む資産管理のノウハウで差別化を図り、テナントとの長期関係や賃料構造の最適化で収益の安定化を目指しています。
新規市場開拓と事業拡大では、サードパーティ資産の管理事業を成長軸に据えています。OZ Fundとの長期運用契約や2022年に買収したMWAを通じて、第三者所有の農地管理を大幅に増やし、運用手数料収入の獲得を目指しています。また、農機具ディーラー向け不動産(ジョンディアブランドで賃貸)など農業関連の不動産にも選択的に投資しており、2022年以降のこうした投資は安定的な賃料を生む想定です。将来的な資金調達については、借入や株式・ユニット発行といった柔軟な選択肢を保持しており、マーケットの状況を見ながら成長投資と株主還元のバランスを取り続ける方針です。
技術革新とリスク管理にも取り組んでおり、サイバーセキュリティの体制整備と内部統制の強化を重視しています。取締役会の監督下で侵入検知やファイアウォール、マルウェア対策などの技術的対策を第三者ベンダーと連携して導入し、インシデント対応方針や従業員向け教育も継続的に実施しています。経営陣は2013年のCOSOフレームワークに基づく内部統制の評価で2024年12月31日時点で「有効」と結論付けており、金利変動リスクの安定化に向けてはラボバンクとの金利スワップ契約を1件導入するなど、財務面のヘッジも組み合わせて事業の持続性を高めています。