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F5, INC.FFIV
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事業内容
F5, Inc.はマルチクラウド環境におけるアプリケーションの配信とセキュリティを主力とする企業です。主な製品・サービスとしては、アプリのトラフィックを制御して性能と可用性を高めるBIG‑IPシリーズやクラウド向けのNGINX、クラウド型のDistributed Cloud Servicesなどを提供しています。これらでアプリとAPIの安全性と応答性を向上させています。
同社の主要顧客は大手企業、通信事業者、金融機関、教育・医療・政府機関などで、世界規模の企業が多くを占めます。収益はハードウェア販売だけでなく、ソフトウェアライセンス、保守・サポート、そしてサブスクリプション型のクラウドサービスが中心で、再販業者やクラウド事業者経由の販売比率も高くなっています。
事業は大まかにハードウェア、ソフトウェア、クラウドサービス、そして顧客向けサポートに分かれます。ハードウェアではBIG‑IP搭載のアプライアンスや次世代のシステムを扱い、ソフト面ではBIG‑IPソフトやNGINXによるクラウドネイティブ機能を展開し、クラウド側ではWAFやAPI保護などのセキュリティ機能をSaaSで提供しています。さらに、運用管理ツールやコンサル・トレーニングを通じて導入・運用を支援しています。
経営方針
同社は持続的な成長と株主還元の両立を目指しています。2024会計年度の売上高は約28.2億ドル($2,816,120千)で、営業活動によるキャッシュ創出が約7.92億ドルと強いキャッシュフローを確保しており、その一部を株式買戻しに充ててきました。2024年度は約282万株を平均177.08ドルで買い戻し、約5.00億ドルを投じており、期末時点で買戻し枠は約4.22億ドル残っていました。直近では取締役会が追加で10億ドルの買戻し枠を承認しており、同社は資本配分で自社株買いを重要な成長・価値還元手段と位置づけています。
重点投資分野はマルチクラウドに対応したソフトウェアとサブスクリプション型サービスで、同社はソフトウェア売上の拡大を図っています。製品構成ではシステム(ハード)売上が約5.37億ドル、ソフトウェアが約7.35億ドルとソフト寄りへのシフトが見られます。これに伴いクラウドインフラやSaaS提供のための研究開発・運用投資や、優先的な人材確保のための株式報酬(2024年度のストック報酬費用は約2.19億ドル)にも資金を割いており、セキュリティや配信性能で差別化することで大手クラウド事業者や専業ベンダーと競合する戦略です。
新市場開拓や事業拡大では国際展開と消費モデルの多様化を進めています。2024年度の地域別売上は米州が約15.8億ドル、EMEAが7.56億ドル、APACが4.79億ドルで、全体の約43.8%を米州以外が占めており、EMEA・APACでの成長を重視しています。また、サブスクリプションや利用量連動の「フレックス消費」といったモデルを拡大中で、契約上の未履行残額(非取消しの残存業務)は約18億ドルあり、そのうち62.4%は次の12か月で収益化される見込みです。チャネル拡大やクラウド事業者との戦略的連携を通じて新規顧客層への浸透を図っています。
技術革新への取り組みでは、既存のアプリケーション配信・保護機能をクラウドネイティブ技術へと進化させることを目指しています。具体的には、Kubernetesベースに再設計したBIG‑IP Nextの展開や、軽量で開発者向けのNGINX製品群の強化、rSeriesやVELOSといった次世代ハードウェアでのマルチテナンシー対応などを進めています。加えてクラウド上の可視化や自動化、API保護を含む分散クラウドサービスを強化しており、必要に応じて脆弱性対策やワークロード保護の技術を買収で補完(過去の主要買収例としてThreat Stackなど)しながら、機能の迅速な市場投入を図っています。こうした投資は短期的にマージンに負荷を与える可能性がありますが、中長期での差別化と顧客ロックインの強化を狙った施策です。