Employers Holdings, Inc.EIG

時価総額
$10.2億
PER
労働者災害補償保険の有力企業。大手給与処理会社経由の販売や自社直販ブランド、API連携のデジタルチャネルを展開。大手給与処理会社が2024年12月31日時点でインフォース保険料の17.2%を生成。米国中心、2024年12月31日時点でインフォース保険料の45%をカリフォルニアで占有。

事業内容

Employers Holdings, Inc.は主に事業主向けの労働者災害補償保険を引き受ける持株会社で、傘下の保険会社を通じて保険の引受、請求処理、損害管理を行っています。同社は保険料収入を中心に、運用資産からの投資収入も合わせて収益を確保しています。

同社の顧客は多くが従業員規模の小さい事業者や中堅企業で、特にカリフォルニア州の比重が高く収入の大きな部分を占めています。同社は伝統的な保険代理店(約2,500社)や専門の流通パートナー、オンライン市場、さらに自社の直販ブランドを通じて販売しており、伝統的代理店が約65%、専門チャネルが約35%の保有保険料比率になっています。中でも給与代行大手のADPは重要なチャネルで、同社の保有保険料の約17%を占めています。

同社の事業は単一の保険ラインである労働者災害補償保険に集中しており、引受、保全、リスク管理、投資運用が主要な事業領域です。製品ラインは小規模・中堅事業者向けに重点を置き、Cerityブランドによるオンライン直販や、業界特化型の商品を専門代理店やパートナー経由で提供しています。同社はカリフォルニアへの依存度や州ごとの規制、保険市況の循環性が業績に影響するリスクがある点に注意しています。

経営方針

同社は持続的な成長と収益性の両立を目指しています。2024年の純保険料収入は約7.5億ドル(Net premiums earned:749.5百万ドル)、当期純利益は約1.19億ドルと堅調な業績を示しており、投下資本の効率化や信用格付け維持を重視する資本政策を採っています。余剰資本は株主還元にも回しており、直近3年間で普通配当として約1.507億ドルを支払い、自己株式買付も約1.492億ドルを実行しました。取締役会は買戻し枠を拡充しており、2023年プログラムでは合計1億ドルの権限を付与、2024年末時点で約2,970万ドルの余地を残しています。

同社は低〜中程度のリスク志向を基軸に、引受の厳格さで差別化を図っています。業種ごとに従来除外していたクラスの中から「現場や作業内容、使用機械が特定基準に合致する低リスク案件」を選別して取り込むことで、危険度の高い群(D〜G)への拡大を進めつつも引受規律を維持しています。また流通面では約2,500の従来代理店チャネルからの収入が2024年に全体の65.3%を占める一方、ADPとの協業が17.2%を占めるなど大型パートナーとの連携で顧客獲得を強めています。投資面では運用資産からの純投資収入が2024年に1.07億ドルと重要な収益源になっており、ポートフォリオは流動性・規制順守・リスク調整後利回りの最適化を目的に構成されています。

新市場開拓と事業拡大はチャネル多様化を軸にしています。従来型代理店に加え、給与処理事業者や医療・他保険会社との提携、デジタルマーケットプレイスやAPIを利用したデジタル流通を強化し、専門分野に強い特化代理店を通じてシニアケアや宅配などのニッチ分野へ進出しています。実績としてデジタル代理店の引受比率は2022年の4.5%から2024年に7.0%へ上昇しており、Cerityブランドによる小規模事業者向けの直販チャネルも維持・拡大しています。一方でカリフォルニアへの依存度が高く(2024年に約45%のインフォース保険料)、地域リスク管理と選別拡大のバランスを重視しています。

技術革新への取り組みでは、デジタル販売基盤とサイバーセキュリティの強化を明確な優先事項としています。見積りや契約締結を行うAPI型のデジタルチャネルを整備する一方、ISO 27005やISO 27001に準拠したリスク評価と外部ペネトレーションテストを実施し、脆弱性発見やベンダーの継続的監視を行っています。サイバー関連の監督は最高情報セキュリティ責任者(CISO)や情報責任者(CIO)、リスク管理委員会を通じて経営層と取締役会に報告され、IT・ソフトウェア関連の契約義務(2024年時点でのその他購入義務は約1,380万ドル)を含めて技術基盤への投資が計画的に行われています。