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Bellerophon Therapeutics, Inc.BLPH
事業内容
Bellerophon Therapeutics, Inc.は肺高血圧症(PH)向けの一酸化窒素療法とそれを送達する専用システム「INOpulse」の研究・開発を主力とするバイオ医療企業です。同社は携帯型の送達装置と薬剤カートリッジを組み合わせ、在宅や外来で使える治療の実現を目指した臨床開発を進めています。
主要な顧客候補は肺高血圧症の患者とそれを治療する病院・診療所、将来的には保険者や医療機関を通じた供給網になります。同社は現時点で製品販売による収益をほとんど計上しておらず、共同開発やライセンス契約、研究契約、州の税務プログラムによる損失繰越の売却などによる資金調達で運営資金を賄っており、臨床試験と規制承認が商業化と収益化の鍵となります。
事業は報告可能な単一セグメントで、INOpulse本体の装置と一酸化窒素カートリッジの開発・製造に集中しています。同社は肺動脈性PHや肺線維症合併PH、COPDやサルコイドーシスに伴うPHなど複数の適応で臨床試験を進め、製造・供給面では外部製造業者や充填拠点との契約や体制を活用し、3つの完全子会社を通じて事業運営を行っています。
経営方針
同社は主力製品である持続吸入一酸化窒素療法「INOpulse」の臨床開発を最優先に据え、フェーズ3試験の完了と薬事承認、商業化を目指しています。2022年の営業損失は約2,240万ドルで、同年末の手元現金は約690万ドルと報告されており、これらの資金は主に間質性肺疾患に伴う肺高血圧症(fILD)のフェーズ3試験に充てられる計画です。経営は当時の資金状況が1年分の運転資金として不足すると評価しており、実際に2023年第一四半期に登録直接売出や税務上の欠損金(NOL)の売却、ライセンス契約などによる追加資金調達を行っています。
重点投資はINOpulseの薬剤とデバイスを一体化した供給網と臨床開発にあります。同社は薬剤カートリッジの製造にIkariaのPort Allen工場を利用しており、この拠点は現在の臨床プログラムに十分な生産能力があり、カートリッジは少なくとも2年の保存期間が確認されています。デバイス本体はFlextronicsやBenchmarkと製造・保守の契約を結んでおり、外来や在宅での長期投与を可能にする点で差別化を図っています。これにより入院環境に依存しない新しい治療の提供を狙っています。
新市場への開拓は未充足の肺高血圧サブタイプにフォーカスしており、特にfILDやサルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に伴う肺高血圧をターゲットにしています。現状では肺動脈性肺高血圧(PAH)向けに14剤が承認されている一方で、fILD関連の治療は承認薬が非常に限られており、同社はこのギャップを取りに行く方針です。自社での販売体制は未整備のため、同社はパートナーとの共同販売やライセンス供与による事業拡大を視野に入れており、実際に2023年の初めにライセンス契約を締結するなど外部資源の活用を進めています。配当は当面実施せず、株主の利益は株価上昇による資本増価を通じて提供する方針です。
技術革新面では、同社は薬剤の投与法や機器設計、重要な安全機構に関する特許取得・維持に注力しており、組成、使用法、デバイス部品にわたる権利を確保しています。臨床面では、治療中止時の急激な病状悪化(リバウンド)のリスクを低減するための事前検査やバックアップシステムを導入し、安全性を重視した改良を続けています。また人材確保のために2014年や2015年の報酬・インセンティブプランを運用し、研究開発と規制対応を継続的に進める体制を整えています。ただし臨床試験の成否や規制審査、追加資金の確保といった不確実性は依然として存在する点に留意が必要です。