Aspen Technology, Inc.AZPN

時価総額
$158.6億
PER
産業用ソフトウェアの最大手。モデリング・シミュレーションやIndustrial AIを核にENG、MSC、APM、DGM、SSEなどの資産最適化ソフトを展開。Emersonが2024年6月30日現在で56%を保有。顧客3,000社超、世界展開。

事業内容

Aspen Technology, Inc. は、プラントや電力網などの大規模な設備を持つ企業向けに、設計から運転、保守まで資産を効率よく安全に運用するためのソフトウェアを開発・販売しています。主力は、工程のモデリングや最適化、運転効率を高めるソリューションで、産業向けの人工知能やデジタルツインを組み合わせて価値を創出しています。

同社の主要な顧客は石油・ガス、化学、電力・ユーティリティ、製造業など設備集約型の企業で、数千社の導入実績を持ちます。収益はソフトウェアのライセンスやサブスクリプション、保守・サポート、導入・コンサルティングなどのサービス収入が中心で、契約更新や使用拡大による継続的な売上を重視しています。

同社の事業は大きく、設計・シミュレーションによるプロセス最適化、運転効率と資産の健全性を高める資産管理、電力や供給網の最適化、そしてデータ統合と分析を担う製品群に分かれます。これらを横断する形でデータプラットフォームやデジタルツイン、産業向け人工知能を組み合わせ、顧客の脱炭素や生産性向上といった目標達成を支援しています。

経営方針

同社はまず既存顧客基盤の深掘りによる成長を重視しています。具体的には、3,000社を超える既存顧客に対して利用率向上や企業規模でのエンドツーエンド提供を進めることで売上拡大を目指しています。加えて株主還元と資本効率の観点から、2024会計年度には総額3億ドルの自社株買い枠を承認し、1,520,993株を買い戻すなど積極的な資本配分を行っており、その後さらに1億ドルの追加買付枠を設けています。運営面では「業務上の卓越性」に力を入れ、今後も高い利益率を維持することを目標にしています。

重点投資分野は製品ポートフォリオの深耕と差別化にあります。同社はENG、MSC、APM、DGM、SSEという五つの製品群を軸に投資を集中させ、製造・設計・資産管理・電力網など資本集約的な業界での問題解決を進めています。差別化策としては高精度のモデリングやシミュレーション、予測分析を組み合わせたソリューション提供と、エマーソンとの商業協定に基づく相手先ブランドでの供給や共同ソリューション開発により販売チャネルと技術面での優位性を確保しています。必要に応じて隣接領域への買収も検討し、ポートフォリオの拡張を図っています。

新市場や事業拡大については、エネルギー転換や電力網のデジタル化を中心に進めています。同社は電力・ガス・水道向けのデジタルグリッド管理(DGM)や地中資源の解析・最適化(SSE)を通じて、再生可能エネルギーの導入支援や送配電の安定化需要を取り込もうとしています。また、グリーン水素、二酸化炭素回収・貯留(CCUS)、直接空気回収やプラスチックの循環利用といった脱炭素分野に向けた「サステナビリティ経路」を整備し、新興分野の顧客やプロジェクトに対して技術提供を拡大しています。さらにDGM・SSEの提供モデルをトークンや期間ライセンスへ移行し、アクセス性を高めて長期的な収益性向上を目指しています。

技術革新への取り組みは同社戦略の中核です。同社は「自己最適化資産(Self‑Optimizing Asset)」という概念に基づき、資産全体のデータを活用して自律的に最適化する方向を目指しています。具体的には、現場(エッジ)とクラウドを組み合わせた処理、産業向けのAI(データ洞察と工学知見を組み合わせた分析)、デジタルツイン、そしてInmationと呼ぶデータ基盤によるデータ整理・活用を強化しています。学術機関との共同研究(例:デラウェア大学やコロンビア大学との連携)や製品開発投資を通じて、低炭素プロセスの分子モデリングやサステナビリティに資するAI応用などの先端技術を事業に取り込むことを目指しています。