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AXT INCAXTI
事業内容
AXT INCは高性能の化合物半導体基板や単元素基板(インジウムリン化物、ガリウム砒素、ゲルマニウムなど)の設計・製造・販売を行っています。同社はウェーハ基板に加えて高純度ガリウムやボロン酸化物、特殊るつぼなどの原材料も販売し、製造は主に中国拠点で行っています。
同社の主要顧客はエピタキシャル成長や光通信、無線機器向けの半導体部品メーカーで、顧客は世界各地に分布しており売上の大半を海外市場が占めます。収益は短期の受注に基づく製品販売と原材料販売が中心で、技術支援を含む直接販売チャネルと代理店を併用しているため、原材料の販売や関連会社からの収益が事業の多様化に寄与しています。
事業面では、低欠陥密度のガリウム砒素(低EPD)や大型化した8インチGaAs、6インチInPなどを旗艦製品として展開し、これらが同社の競争優位になっています。再資源化(リサイクル)や原材料企業への出資による垂直統合でコストと供給安定性を高め、研究開発では歩留まり改善や品質向上、大口径化に注力しています。
経営方針
同社は高性能化合物半導体基板の世界的な供給リーダーを目指しています。2024年の連結売上高は約9,936万ドルで、そのうち基板売上が約6,775万ドル、原材料等が約3,161万ドルでした。国際売上の比率は約92%と海外需要が主体であり、成長の中心としてInP(リン化インジウム)や大口径ウェハ(8インチGaAs、6インチInP)を掲げています。具体的には8インチGaAsを小量ながら出荷開始し、6インチInPは主要顧客からの需要が確認されているため、これらを通じた売上拡大を目指しています。
同社は差別化の源泉として原材料の垂直統合と中国での低コスト生産を重視しています。中国に製造拠点と長期資産を集中させており、減価後の長期資産は中国に約1.61億ドルと高い比率で配分されています。また、基板品質の重要指標であるエッチピット密度(EPD)の低減に注力し、低EPD GaAsは参入障壁となる技術優位性を確保しています。サプライチェーン強化のため当社は中国の原材料会社に部分所有や出資を行っており、これらの出資先は2024年に約340万ドルの持分利益を押し上げるなど、安定供給とコスト優位に寄与しています。
新市場開拓や事業拡大では、AIやクラウドデータセンター向けの高速光伝送、車載・5G関連、ウェアラブルなどの用途を重点市場としています。同社は工場見学や顧客対応を増やして顧客の量産適格性を高める計画で、北京の子会社Tongmeiを通じた資本市場での展開も進めています(Tongmeiへの私募投資は約4,900万ドル)。加えて、定められた地域での設備投資計画(例:定義地域で約9,000万ドル、Kazuoで約1,500万ドル相当の投資目標)を通じて生産能力を拡大し、納期短縮と量産体制の構築を目指しています。
技術革新への取り組みは、欠陥低減・歩留まり向上と材料コスト削減に明確にフォーカスしています。2022年にInPのリサイクルプロセスを製造へ導入し、GaAsのリサイクルプロセスも展開しており、これにより材料費低減と環境面の改善を図っています。研究開発は低EPDや大口径化、歩留まり改善を中心に行われ、顧客技術支援は理学系の高度人材を多く抱えることで強化しており、これらの施策で製品競争力と粗利益率の向上を狙っています。