ADOBE INC.ADBE

時価総額
$1519.1億
PER
デジタルメディアと企業向けデジタル体験ソリューションの最大手。Creative CloudやExperience Cloud、生成AIを搭載したサブスク型製品を展開。2024年3月に株式買戻し枠250億ドルを承認、ASRで95億ドルを実行。米国・欧州・アジア主要国で展開。

ランドスケープPowered by 会社四季報オンライン

企業概況
194文字)
業績概況
142文字)
テーマ
1項目)
ブランド
3項目)
ライバル企業
5社)
同業種の日本企業
2社)

事業内容

ADOBE INC.は、デジタルコンテンツの作成・管理・配信を支援するソフトウェアとクラウドサービスを主力に事業を展開しています。クリエイティブ制作向けのツールやPDFを中心としたドキュメント管理、企業向けの顧客体験を最適化するクラウドサービスなどが代表的な提供領域です。

同社の顧客は大企業から中小企業、広告・マーケティング担当、プロのクリエイターや一般消費者まで幅広く、用途に応じた導入形態を選べる点が強みです。収益は主にサブスクリプション型のクラウド収入が中心で、従量課金や永続ライセンス、導入支援や保守・コンサルといったサービス収入も含まれます。

同社は大きくデジタルメディア、デジタルエクスペリエンス、出版・広告の事業セグメントに分かれており、製品ラインはそれぞれに対応しています。デジタルメディアは制作ツールと生成AIを組み合わせたクリエイティブ製品群、デジタルエクスペリエンスは顧客データ統合やキャンペーン管理、パーソナライズ配信を担うプラットフォーム群、出版・広告は印刷技術や広告配信のソリューションを扱っています。また、導入支援やカスタマーサクセス、広範なパートナー網を通じて顧客の定着と拡張を図っています。

経営方針

同社はサブスクリプションを軸に安定的な成長を続けることを目指しています。直近の実績では、デジタルエクスペリエンス事業の売上が2024会計年度で53.7億ドル(前年同期比+10%)、サブスクリプション売上は48.6億ドル(+12%)に達しており、デジタルメディアの年間経常収益(ARR)も約173.3億ドルと前年から13%増加しました。こうした定期収入の拡大を通じて収益の予測可能性を高める一方で、株主還元として最大250億ドルの自社株買い枠を設定し、積極的に株式の取得(2024年には複数の加速買戻し契約で約95億ドルの前払)を実行しています。

重点投資分野は、生成系人工知能(AI)と顧客体験(CX)の両輪で差別化する戦略です。同社はクリエイティブ系のツール群と顧客体験を管理するプラットフォームを組み合わせ、「コンテンツの制作→配信→効果測定→最適化」という一連のワークフローをワンストップで提供することを目指しています。具体的には、商用利用に適した生成AIモデル(例:Firefly)を製品にネイティブ組み込み、Adobe Experience Platform上でリアルタイム顧客プロファイルや専用の解析機能を提供することで、単なるツール提供に留まらない差別化を図っています。加えて、直販部隊に加えて代理店やシステムインテグレーターなどのパートナーエコシステムを拡充し、導入・運用支援を強化しています。

新市場開拓と事業拡大では、エンタープライズ分野とコマース領域の取り込みを重視しています。同社は大口企業向けの体制を強化し、Cレベルとの協業や「変革型アカウント」を対象とした拡販を進めることで既存顧客のアップセル・クロスセルを狙っています。加えて、B2B向けコマースやマルチチャネル配信、業務管理アプリ(Workfront)などを組み合わせて新たな収益機会を創出しており、グローバルでは開発・営業拠点やデータセンター投資を通じて地域展開を加速しています。成長投資だけでなく、必要に応じて戦略的な買収や投資も行い、技術・製品の補完を図る方針です。

技術革新への取り組みは研究開発と実運用の両面で具体化しています。同社は生成AIモデルの開発・運用に伴う計算資源や独自データセットへの投資を増やし、ドメイン特化のAIサービス(属性推定、異常検出、帰属分析など)をExperience Cloudに組み込むことで顧客の意思決定を支援しています。同時に、AIの責任ある利用やデータ保護、セキュリティ対策にも注力しており、第三者のデータセンターやホスティング契約に対する非取消しの発注額は約57.9億ドルといったインフラ投資も行っています。こうした投資は短期的にコストを押し上げる側面がある一方で、長期的に差別化された製品と高い顧客ロックインを実現することを同社は目指しています。